2017年6月15日 (木)

長い避難生活を終えて

スリランカ北部ムハマライ地区では未だに内戦中に埋められた地雷が多く残っています。国連の掲げた、2020年までにスリランカの地雷を撤去する事業 (Mine Free
Sri Lanka 2020)に向け、地雷撤去を専門とするいくつかのNGOが撤去作業を進めています。しかし、一歩間違えると大変危険な作業には長い時間が必要となります。

つい最近、JENスタッフは、地雷撤去が終わり解放されたヴァンボドゥカーニ地区へ事業の調査をしに行きました。木もない砂の平地には簡易シェルターがポツポツと建っています。

内戦で全てを失い、十数年と長引く避難生活ではなかなか安定した生活が築けないため、新規解放地区に戻ってくる家族は貧困家庭がほとんどです。スリランカ政府から再定住のために供与されるのは生活用水の公共の井戸、一家につき5000ルピー(約3600円)の支援金と1か月分の食糧(約2150円分)です。

あとはNGOの支援で農地にフェンスを張りめぐらせたり、井戸を得たり、簡易シェルターを建てたりするのみです。生活の基盤が作られていない中で仕事を探し、生きていくのは大変困難です。その上、家から50メートル先には撤去されない地雷のある大地が広がります。皆さんは自分の庭から「地雷注意!」の看板が見える生活を想像できるでしょうか。

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【解放されたばかりの地区】

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【地雷の注意看板(写真ではハッキリ見えませんが、木の下辺りにあります)】

そのような地雷源が広がる環境下でも、共有の井戸から確保できる水を使い、早速農業を始めている家庭が数軒ありました。限りある水を効率的に使う方法を考え、少しでも家族のために野菜を育て、近隣の人びとと協力し合いながら一歩一歩生活の再建をしていく。そんな人びとの強さをサポートしていければと願っています。

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【わずかな水を使い育てられている野菜】

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6月 15, 2017 政治、経済、治安北部帰還民支援 |

2015年1月22日 (木)

大統領選挙とローマ法王

 2015年1月8日にスリランカの大統領選挙が行われました。
 スリランカの大統領選挙は日本の間接選挙とは異なり、住民による直接選挙です。
 そのため、政府より投票日は有給休暇とするようにお達しがありました。

 選挙は再任を目指す現職のマヒンダ・ラジャパクサ氏に対して、保健大臣のマイトリパラ・シリセナ氏が主だった対立候補でした。 マイトリパラ・シリセナ氏は現職大統領と同じ政党から離脱して新党を結成して立候補したため、反旗を翻した形になります。

 翌9日に選挙結果が発表され、結果は・・・マイトリパラ・シリセナ氏が新大統領として当選しました。
 マイトリパラ・シリセナ氏51.28%、マヒンダ・ラジャパクサ氏47.58%と接戦でした。

 勝った方が大騒ぎしたり、負けた方が結果にいちゃもんつけたりして、暴動が起きたりすることを恐れて、スタッフの安全確保のために急遽事務所を休みとしたのですが、選挙結果が出た直後にマヒンダ・ラジャパクサ氏は敗北宣言を行い、役を降りたため、大きな事件もなく結果発表日は過ぎました。スリランカの人々は粛々と結果を受け入れた様な印象を受けます。
 投票率は81.52%でした。2014年12月に行われた日本の衆議院議員総選挙が52.66%だったことが恥ずかしいです。

 翌週の1月13日から15日には、ローマ法王がスリランカを来訪し、14日に北部マナー県にある「Shrine of Our Lady of Madhu」(マドゥー聖母マリア教会)を訪れました。
 スリランカの主な宗教は仏教(約70%)、ヒンドゥ教(約12%)、イスラム教(約10%)、キリスト教(約7%)で構成されています。北部マナー県はカトリック教の強い地域で、ポルトガル統治時代に影響を受けたと言われています。
 

 前日13日には政府より14日を国民の休日に追加する発表がありました。15日は元々国民の祝日であったため連休です。

 新年早々、イベントだらけ、休みだらけのスリランカからでした。

 現地総務経理担当 那須田智生




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1月 22, 2015 文化、生活、習慣政治、経済、治安 |

2009年5月28日 (木)

内戦の終結

090528_low  スリランカでは、19日に国会で行われた大統領の勝利宣言により25年にも及んだ内戦が終結しました。

 勝利宣言のテレビ中継に合わせて、コロンボ市内には国旗と大統領の看板がたくさん飾られ、事務所の近くでは祝福の爆竹が鳴り響いています。また、車の窓から体を乗り出して国旗を振り、叫びながら市内を周回している人々が多くみられました。コロンボ市内は勝利の喜びに包まれています。

 一方で、最後まで戦闘が行われていた北部地域では、2006年からの戦闘で約28万人の住民が避難生活を強いられています。反政府軍の支配地域から脱出し、政府軍に保護されるまで、住民は食料や水も充分にないまま避難を続けていました。中には健康状態が悪化した人々もいます。090528_low_2

 避難民の多くが、戦闘地域の南に隣接するワウニア県の避難民キャンプに収容されています。しかし、ここ1ヶ月で、一気に20万人も増えたキャンプでは、スリランカ政府や国連、NGOによる支援がなかなか追いつきません。仮設テントや簡易トイレの建設、水や食料、衣類、石鹸などの配布が急ピッチで進められていますが、林を切り開いて急造しているキャンプのため排水施設に問題が発生したり、支援物資の配布でも混乱したりしています。

090528_low_3  東部で活動しているジェンも、この北部ワウニア県にて緊急支援を行なうための調査を進めています。中でも特に緊急性の高い支援を見極めている段階です。引き続き、皆さまのご支援、よろしくお願いします。

「母の日のブーケが野菜の種に」スマイルシーズ観察日記はこちら

5月 28, 2009 緊急支援文化、生活、習慣政治、経済、治安 |

2009年4月16日 (木)

空港での戸惑い ~スリランカの新しいインターン~

はじめまして。
スリランカのコロンボ事務所で3月から12月までインターンとして勤務することになりました道正義隆(どうしょう よしたか)です。

JEN東京本部での研修を受け、先月スリランカに入りました。
スリランカに来て初めて驚いたのが、空港での厳重な警戒です。
日本と全く異なり、大きなライフル銃を持ったガードマンが各所に立っています。
私はその光景に戸惑いながら、なるべくガードマンと目を合わせないように離れて歩いていました。

すると、突然「STOP」と声をかけられました。
「何も悪さはしていないのに」と内心はらはらしていると、「ルートの逆走は禁止」とのこと。
何もなくてよかったと思いましたが、銃を持った人に呼び止められるのは緊張するものです。
私はすぐに元のルートに向かってUターンしました。

車で事務所に向かう途中にも、多くの検問がありました。
スリランカについて多少は調べてきましたが、
この時にあらためて「まだ紛争を行っている国に来たのだ」と実感しました。

多くのものが僕にとっては新鮮なスリランカ。
この新鮮さを大事にしながら残りの8ヶ月間、悔いのないようにできる限りのことに挑戦していきたいと思います。
よろしくお願いします。

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(写真:右・母親のようにいろいろ教えてくれるオフィス・アシスタントのプレマさん、
左・道正)

4月 16, 2009 事務所・スタッフ文化、生活、習慣政治、経済、治安 |

2009年2月 5日 (木)

気丈なお母さんの紛争の傷跡

090205_mofa_chabo_20090129_koolavar  クラビチェナイ村のサンタナピレさんは、ジェンの事業で結成した管理委員会(支援地の住民による支援受け入れの組織)のリーダーです。集会やワークショップのときにはいつも目を輝かせて一生懸命話を聞き、とても活発で、頼もしいおかあさん、という印象でした。

 しかし先日、カウンセリングを担当する心理学専門家に同行して彼女の家を訪問したとき、これまで知らなかった一面を見ました。

 サンタナピレさんには、5人の子どもがいました。息子の1人は政府軍の攻撃で亡くなり、娘も別の戦闘に巻き込まれて亡くなりました。さらに、このような状況が耐えられなくなったサンタナピレさんのだんなさんも自殺してしまいました。

 涙を流しながら、過去に起こったできごとについて話してくれたサンタナピレさん。村の人々の近くで活動しているJENスタッフを信頼し、心を開いてくれたのです。

 精神的な傷があまりにも大きく、引きこもりがちになっていた時期もあったそうですが、今は,孫の面倒を見ながら、生活を再建しようと一生懸命です。簡素な家ながらも室内は清潔に整えられていて、彼女が自分で作ったというヤシの葉のゴザや、バスケットがありました。JENが配布した種で育てたとうもろこしやピーナッツも、ほかのどこの家よりも元気に育っています。

 辛い過去を抱えながらも、明るく前向きに生きているサンタナピレさんの姿に、訪問したスタッフ一同、心を揺さぶられました。そして、このように非常に厳しい状況の中で、必死に自立していこうとしている人々の尊い努力を支援していきたいと、決意を新たにしました。

2月 5, 2009 心のケア文化、生活、習慣政治、経済、治安 |