2024年11月14日 (木)

私たちの新しい仲間、ワヒード・アリさん

彼は、ダドゥ郡出身の熱心なエンジニアです。妻、6人の子ども、母親と生活しています。

小さな頃から建設に興味を抱いていました。彼が住んでいた村から25キロ離れた町で専門教育を受けるのは簡単なことではありませんでしたが、しかし長年の夢であった土木技師になることを決意し、ダドゥ市工科大学で土木工学を学びました。勉学のかたわら、家族の農作業をサポートするために毎週末帰郷していました。

2007年に土木技術の学位を取得した後、民間の建設会社でキャリアをスタートさせました。彼は数多くのプロジェクトに取り組んで専門知識を深め、国内外の組織でコンサルタントとしても活躍しました。その間も農作業をサポートするため、特に種まきや収穫の季節には頻繁に村に帰っていました。

2024年5月、ジェンの主任エンジニアとして「シンド州における教育環境・水衛生改善及び災害対応力向上事業」を担当することになりました。この地は彼の故郷であり、プロジェクトの内容は、洪水被害を受けた地域の学校を再建することを目的としています。彼の役割はとても重要なポジションになります。技術的な検証を行い、インフラの課題を明らかにし、プロジェクトの成功に向けて尽力しています。

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建設業者と話し合うワヒードさん

彼のリーダーシップと献身的な姿勢により、このプロジェクトは予定通り、着々と進んでいます。

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工事の週次報告書を作成するワヒードさん

情熱的でコツコツと課題解決に尽力を注ぐ彼の仕事への姿勢は、チームみんなに良い影響を与えてくれています。私たちは、ワヒードさんと共にダドゥ郡の子どもたちの学びの場を再生させるため、これからも微力を尽くします。

 

※本事業は、外務省「NGO連携無償資金協力」からの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。


皆様のご支援が、次世代の夢を実現する架け橋となります。
JEN
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11月 14, 2024 事務所・スタッフ学校修復・建設 |

2024年9月26日 (木)

困難を越えて花開いた希望:シャフィクさんのお話

 シャフィクさんは、ダドゥ郡に住んでいます。家族は、シャフィクさん、母親、妻、兄夫婦とその子どもたち4人の9人です。彼は耳が聞こえず、親戚の畑で働く傍ら、ケーブルテレビの技術者としてパートタイムで働いています。

 洪水で、彼の家族は家も畑も被害を受け、困難に直面しました。シャフィクさんは種子を失ったうえ、農業復興に必要な資材を買う資金が不足し、冬に幡種し春に収穫するラビ作物(小麦)を栽培することができませんでした。その時、JENの農業支援に参加することになりました。

 彼は地域の問題に対する関心と解決策を求める姿勢を強く持っており、最も脆弱な農家の特定と登録を手伝い、村で種子やその他資材を配布した際にも一生懸命働きました。豊富な農業経験のある彼は、村の「リーダー農家」に選ばれました。そして、小麦、大麦、からし菜の種子と、肥料、最小限の農薬、安全な種子保管用密閉袋などの資材を受け取りました。

 彼は、JENの農業専門家と農業局の専門家の指導を受け、知識を活かして種子を作付けし、今までのおよそ2倍の収穫を得ました。その成果により、JENから最優秀農家賞を授与されました。彼の農業は見事に回復し、年間を通じて家族が食べていくのに十分な穀物を得ることができるようになりました。これにより、家族の希望も再び芽生えました。

 このように、シャフィクさんと家族が困難を乗り越えられたのは、皆様の温かい支援のおかげです。皆様のご協力が、多くの家族に希望をもたらします。どうぞ、私たちの活動にご支援をお願い申し上げます。

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農業専門家から殺虫剤を受け取るシャフィクさん

 

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畑の作物の成長をチェックするシャフィクさん

9月 26, 2024 生計回復事業 |

2024年8月15日 (木)

希望の種を蒔いて:レハナさんのお話

32歳でシングルマザーのレハナさんは、2022年の大洪水で大きな被害を受けたダドゥ郡のカニャラ村に住んでいます。彼女は17歳の息子と15歳の息子、1歳の娘を育てています。もともと貧困状態にありましたが、大洪水によって、作物や家屋、インフラ、家畜が壊滅的な被害を受け、生活はより一層厳しいものとなりました。

そんな中、ジェンがカニャラ村の農業支援を開始しました。レハナさんは事業参加者となり、強い意志を持って農業に取り組みました。その結果、リーダー農家に選ばれ、研修で学んだ知識を他の農家に伝えました。ジェンが提供した種子は高品質で高い発芽率を誇り、村全体で作物を長い期間栽培できるようになりました。収穫量が増えたことで、市場で販売することもできるようになり、村の人びとの生活は改善しつつあります。

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レハナさんは、収穫物の販売で得た収入で、家計が安定し、子どもたちが勉強を続ける助けにもなりました。経済的に厳しい中でも、レハナさんは子どもたちが勉強を続けられるよう頑張っていました。

さらに、レハナさんはより家計を安定させるために、ミシンを購入して近所の人たちのために服を縫い、ヤギを購入して飼育し、より収入を得るようになりました。彼女の起業家精神は、息子たちにも影響を与え、学校の休暇中に近隣の村で氷を売り始めるなど、家計を助ける方法を見つけました。

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ジェンの支援とレハナさんの努力により、かれらの生活の質は劇的に向上しました。単に生き延びるだけでなく、安心感と希望に満ちた未来へと歩みを進めています。レハナさんのお話は、自然災害で大きな被害を受けた村が、支援の力でどれだけ元気になれるかを教えてくれます。

 

皆さまのご支援が、厳しい環境にいる人びとに希望と笑顔を届けることができます。JENサポーターになって、私たちと共に「生きる力」を支えてください。

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8月 15, 2024 農業支援 |

2024年7月 4日 (木)

グラーム・ナビ君の学校の現状を知ってください

パキスタンのシンド州ダドゥ郡のような自然災害の多い地域では、洪水やその他の環境災害により学校が、大きな被害を受けています。

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洪水で浸水した学校。壁の布をご覧ください。左側の布の上側の少し下まで浸水しました。


2022年の洪水では多くの学校が壊滅し、生徒たちは仮設テントで勉強を余儀なくされました。これにより、機能的なトイレの不足や不衛生な環境が蔓延し、学校中退の危機が迫り、多くの子どもたちの教育の見通しが危険にさらされました。

グラーム・ナビ君は、そんな厳しい状況下で生きる一人の少年です。洪水被害を受けたダドゥ郡の公立小学校の3年生で、先生のお話によると学校で最も優秀な生徒の一人です。家族の経済状況は厳しいものの、彼は学ぶ意欲があり、勉強に熱心に取り組んでいます。

しかし、2022年の洪水により、学校が壊滅的な被害を受けたことを知ったとき、グラーム・ナビ君は大きなショックを受けました。彼は父親に別の学校に通わせてもらえないかと尋ねましたが、父親にはその余裕がありませんでした。

ほとんどの学校が同じような状況にあり、洪水の緊急事態のため、当初は政府が学校を閉鎖しました。それでも、彼は近くに住む学校の先生の無償の援助を受けながら、自宅で勉強を続けました。困難にも関わらず、適切で完全な教育を受けたいという彼の決意は揺るぎませんでした。現在、彼の通う学校はテントで運営しています。

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彼の学校は、現在、仮設テントで運営しています。

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テント内で授業を受ける子どもたち

ジェンはダドゥ郡教育環境改善プロジェクトを実施する予定で、彼の通う小学校もその対象になりました。このニュースを聞いたグラーム・ナビ君は、自分の学校が改修され、必要な教育施設が整備されることを知り、「自分が通う学校がテントから建物に変わることをずっと夢見ていた」と喜びました。

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5月以降は毎日最高気温40度以上が続きます。テントの中はとても暑いです。

彼は両親や学校の先生たちに、この機会を最大限に活用し、さらに熱心に勉強を続けると伝えました。そして、彼の学校を選んでくれたジェンと教育省に心から感謝の気持ちを述べました。

私たちの活動は、グラーム・ナビ君のような子どもたちに希望を与えるものです。皆様のご支援があれば、もっと多くの子どもたちに笑顔を届けることができます。どうか、私たちの活動にご協力ください。

いつも応援をありがとうございます。
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7月 4, 2024 学校修復・建設 |

2024年5月 9日 (木)

洪水からの復興: シードシェア(種の共有)で再び立ち上がったモハメドさん

私はモハメド・アリと言います。ダドゥ郡の住民です。

私の家族は私と妻、息子 1 人、娘 4 人の7人です。子どもたちはそれぞれが勉強に励んでおり、長女は大学の卒業を目指しています。

2022 年の洪水で、家屋やインフラが破壊され、作物や種子や農業資材、ヤギ 2 頭と牛 3 頭を失ってしまいました。その痛みを忘れることはできません。この災害の後、長い間種子を購入したり、耕作に備えたりすることができませんでした。

ある日、私たちの地域で洪水の被害を受けた農家に農業支援を提供しているNGOであるジェンについて知りました。私たちの村が農業支援事業の対象となりました。

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種子の提供を受けるモハメドさん

ジェンが私たちに小麦・大麦・からし菜の在来種の種子やその他の農業資材(肥料、殺虫剤、種子保存袋、農法研修など)を提供してくれたことを、とてもうれしく思いました。これらは、弱い立場にある私たち家族にとって、とても貴重なもジェン農業チームと一緒に、学んだ内容について他の農家に研修をすることになりました。ジェン農業チームと協力し、技術を学びながら、それを栽培に応用しました。その結果、私の能力が飛躍的に向上し、ジェンから「最高の農家賞」に選ばれました。


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「最高の農家賞」受賞の様子

一生懸命努力し作業した結果、ようやく小麦や野菜を収穫することができ、これからも生産が期待できます。私の家族にとっては十分な量です。たくさん収穫できた種子の中から、最初に受け取った種子と同じ分量の種子を新たに2軒の農家に分けることで、活動に参加する農家が増えていきます。

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収穫の様子

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収穫した麦とモハメドさん

さらに、ジェンから追加で夏野菜の種子が配付されるという朗報を聞きました。これは家庭用だけでなく、市場で販売するのにも大変役立ちます。すでにこの種を受け取ったので、すぐに栽培を始められることに興奮しています。

最後に、種子や資材、現代の農業技術という貴重な贈り物を私たちに提供してくださったジェンに心から感謝しています。


このように、モハメド・アリさんは笑顔で話してくれました。当初は洪水の際無力だったと話していたモハメドさんが一生懸命に農作業をしていたのを、近くで見ていました。彼が自給自足できるようになり、新たな可能性を開けたことで、インタビューをした私も、とても嬉しく思いました。モハメドさんは、収穫した種の一部を他の世帯へ提供すること、得た知識を他の世帯に伝えることを楽しみにしています。私は、被災した地域の人びとが、希望を持ちながらより良い暮らしができることを心から願っています。

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 ※本事業は、株式会社ゼンショーホールディングスからの寄付金やジェンへの寄付金により実施しています。

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5月 9, 2024 洪水被災者支援農業支援 |

2024年4月11日 (木)

私たちに希望、健康、幸福を与えてくれた給水計画

 事業参加者のひとり、カイスタさんのお話を紹介します。57歳のカイスタさんは、パキスタンKPK州の旧FATA地域の村に妻と3 人の娘と5人家族でこの地域に長い間住んでいます。

  彼の村は高地に位置し、村びとは、山の泉から飲料水を得るためにロバや手押し車を使い毎日長距離を移動しています。水源が村から1500メートル離れているため、長年にわたって水不足という厳しい課題に直面してきました。

 特に干ばつ期間中は飲み水を確保するのに精一杯で、衛生管理に時間やお金をかけることができなくなり、コミュニティの衛生状態も悪化します。村から離れた丘にある唯一の水源も、蓋などがないため汚れやすい状況でした。

 長年水の問題に苦しんでいた村でしたが、ある日ある日ジェンが、村のすぐそばに水道管やと共同水栓を提供する給水計画をもってきました。この計画には、貯水槽、家畜の水飲み場の建設も含まれていました。

 カイスタさんは、「ジェンの給水プロジェクトによって、コミュニティの中で簡単に清潔な水が手に入るようになりました。地域のニーズを汲み取りながら迅速に改修工事を進め、短期間で水源の修復を完了させ、村の状況が大幅に改善されました」と話してくれました。

 加えて、カイスタさんは、「ジェンは、コミュニティのボランティアと協力して、水と衛生に関するセッションも実施してくれました。これらのセッションは非常に有益で、村の人びとの衛生知識や意識が高まりました。私は、給水計画の完成後、コミュニティにきれいな飲料水が確保され、水衛生促進や健康活動の改善がもたらされたことに、深く感謝しています。私たちに希望、健康、幸福を与えてくれました」と、とても嬉しそうに話してくれました。

 ジェンは、カイバル・パクトゥンクワ(KP)州オラクザイ郡(旧FATA:旧連邦直轄部族地域)で、紛争やテロの影響を受けた人々たちが、安全な飲料水を確保し、維持できるよう、水衛生環境の改善を目指し活動を行っています。

 現在、計画の7ヵ村(1,553世帯)に対し、水衛衛生促進活動を行い、5ヵ村(1,188世帯)の給水施設整備が無事に終了しているところです。 

 

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カイスタさん一家

  
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衛生教育プログラムの実施

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モニタリング時のスタッフと参加者の皆さん

※本事業は、外務省「NGO連携無償資金協力」からの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

 

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4月 11, 2024 水衛生改善 |

2024年3月 1日 (金)

現地スタッフからの便り

1月後半に、ジェンの事務局長の木山とプログラムオフィサーの松浦がパキスタンの事務所に来ました。パキスタンの事務所にはパキスタンチームだけでなく、アフガニスタンの同僚チームも来て、空港で久しぶりに再会しました。私や同僚たちはこの日を心待ちにしていました。

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翌日から、早速全体ミーティングです。私はパキスタンのプロジェクト・オフィサーとして、他の職員と共に、現行の事業の進捗について、会議の参加メンバーに説明を行いました。その間、沢山の質問を受け、意見交換を行いました。最終的にはチームの活動をみんなが後押ししてくれました。

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今回、事務局長は、事業地があるシンド州ダドゥ郡の事務所に移動し、実施中の事業を確認して、現地で実施しているセッションに参加してくれました。セッションでは、現地の農民たちの喜びと感謝の声を聴くこともあり、プロジェクトの成果を感じてもらえたとのことです。事務局長に直接現地のチームの活動やその頑張りを見てもらえることは、私にとっても、チームにとっても、やる気につながりました。

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現地での最後の会議では、農業局関係者との話し合いも行われました。枯渇していた農地に、ジェンがプログラムを実施し、リーダー農家を育て、その方々が次の種と指導をしていく仕組みと農作物が順調に育っている報告などを行いました。それを受けて、現地の農業局長やその他関係者からの感謝と期待に満ちた言葉を受けました。私たち現地スタッフは、ジェンの活動が地域に与える影響の大きさを再確認できました。

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帰国前に事務局長からこれからも質の高い事業を続けるよう応援する言葉をもらいました。この訪問を通じて、私たち現地スタッフは、地域の成長と発展に向けて更なる努力を惜しまず前進していくことを誓いました。

 

3月 1, 2024 農業支援 |

2023年12月21日 (木)

フセインさんの話: 洪水被害を受けた農村の復興の光

 2022年にパキスタンで起きた大規模な洪水は多くの死傷者、家屋やインフラの破壊、伝染病、家畜や作物の喪失、土壌の劣化など壊滅的な被害を引き起こしました。ジェンは、最も被害が大きかったシンド州ダドゥ郡で食糧危機の改善を目指し、農業支援を行っています。 

 1,100世帯(約7,150人:世帯平均6.5人)を対象に、洪水に強い複数の作物の種子、肥料殺虫剤、農薬、密閉式種子保存袋を提供し、農家が現代的な農法で耕作するための研修も行いました。これから、次の栽培季用の種子を適切に輸送・保管するための研修を実施する予定です。 

 事業参加者のひとり、フセインさんのお話を紹介します。フセインコソさんは、シンド州ダドゥ郡にあるアリ・ブクス・コソ村に住んでいます。フセインさんは障がいを持っており家族は非常に貧しいです。2 人の妻と 12 人の子ども (女の子 6 人、男の子 6 人) がいます。そのうちの1人は腎臓結石を患っています。 

 フセインさんは、子どもの治療費と農業を再開するための費用を同時にまかなうのが難しく耕作の準備が困難な状況でした。また、2023年になっても洪水の水が引かず、ラビ作物[1]を栽培できる農地がありませんでした。さらに、浸水後の塩害で、2023年はハリフ作物[2] を栽培することもできませんでした。 

[1] Rabi(10 月~4 月)は 10月以降の作付け、4 月ころに収穫される冬作で、小麦などがその中心作物である。

[2] Kharif(4 月中旬~10 月中旬)春から夏に作付され、秋に収穫される夏作で主に米、綿花が中心である。

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 洪水後:荒れてしまったフセインさんの土地  

          

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 洪水後:塩害が発生したフセインさんの土地 

 フセインさんは、「この危機的な状況の中で、ジェンが農地の開拓についてアドバイスをくれました。私は村の仲間の助けを借りて、土地を整備し、運河の水で1か月間灌漑を行いました。蓄積した塩分が溶け出し、農地の肥沃度が回復しました。そして、2024年のラビ栽培の準備が整いました。私はジェンから提供された種子をまき、農業専門家から技術的な研修を受けました。作物の栽培が終わるまで、彼らと連絡を取り続けます」と話してくれました。 

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 村びとの協力を得てレンタルしたトラクターで、土地を整備している様子        

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 種を受け取る様子 

 

 加えて、フセインさんは、「今シーズンは豊作が見込まれており、一部は来年の種として残しておきます。これで今後の家族の食べ物を確保できるよう願っています。私をサポートしてくれたジェンと日本の皆さんに感謝しています」ととても喜んで話してくれました。 

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 村びとの協力で小麦の種まきが終わり、芽が出始めた土地の前で立つフセインさん 


 ジェンは、引き続きパキスタンの水害被災者支援を実施してまいります。改めまして皆さまの温かいご支援に心より感謝申し上げます。
 

 

 ※本事業は、ジャパンプラットフォームからの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。 

 

12月 21, 2023 生計回復事業 |

2023年11月16日 (木)

ガルさんの話:ガワク村に清潔な水をもたらす

 ジェンは、ハイバル・パフトゥンハー(KP)州オラクザイ郡で、紛争や武力抗争の影響を受けた人びとが、安全な飲料水を確保し、維持できるよう、水衛生環境の改善を目指し活動を行っています。7ヵ村(1,553世帯)に対し、水衛生促進活動を行い、内5ヵ村(1,188世帯)に対して、給水施設整備を行っています。

 現在7ヵ村中2ヵ村で、給水施設整備と水衛生促進活動が無事終了しました。

 事業参加者のひとり、ガルさんのお話を紹介します。ソチャ・ガルさんは、KP州オラクザイ郡にあるガワク村に住んでいます。ガルさんは妻、息子3人(内、一人未婚)、娘2人(未婚)、息子の妻2人、孫6人の15人家族です。

 ガルさんの生活は非常に厳しく、苦労の連続でした。特にきれいな水の不足は深刻な問題でした。病気になることも多く、女性や子どもたちは遠方まで水汲みに行かなければなりませんでした。家族がいない時には、ガルさん自身もロバを使って水を汲むことがありました。状況が改善されないことに絶望し、希望を持つことは困難でした。

 その後、ガルさんの村にジェンが訪問し、必要としていた清潔な水を提供するための計画を提案しました。ジェンは、給水タンクや他の設備の修理を行い、泉を保護し、水を集める施設を作り、村の周囲にパイプを敷設し、容易に清潔な水を得ることができる仕組みを整えました。

 ガルさんは、「ジェンは私たちに物をきれいに保つことの重要性を教えるだけでなく、清潔さや健康を保つ方法も教えてくれました。適切な道具や水道の使い方も教えてくれました」と話してくれました。

 加えて、ガルさんは、「ジェンのおかげで私たちの生活は素晴らしい変化を遂げました。長い距離を歩く必要もなく、清潔な水が手に入り、健康や幸福も体験できるようになりました。この例は、人びとが優しさと協力で大きな力を持ち、一緒に未来を変えることができることを示しています。ガワク村のソチャ・グルとしてだけでなく、コミュニティ全体を代表して心からの感謝を申し上げます」と、とても嬉しそうに話してくれました。

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ジェンスタッフに話をするガルさん(右)

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  共同水栓がガルさんの家の前に設置されて、水を遠くまで汲みに行く必要がなくなりました。


 事業実施中のKP州オラクザイ郡は、2018年5月にKP州に合併した旧連邦直轄部族地域(旧FATA)の13郡の内、7つの郡に含まれます。これらの7つの郡は、いずれも水衛生環境が極めて劣悪ですが、特に武力抗争や紛争、宗派間の争い[1]の影響で最も水衛生施設の破壊が激しいオラクザイ郡[2]で、水供給支援事業を実施しました。当郡は、他の郡に比べて継続的に自然災害や紛争、武力抗争の影響を受けており、予測が出来ない不安定な治安の下、パキスタンでは最も取り残された郡の一つとして認識されているからです。

 ジェンは、引き続きパキスタンの水供給支援を実施してまいります。改めまして皆さまの温かいご支援に心より感謝申し上げます。

※本事業は、外務省日本NGO連携無償資金協力からの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

[1] 2007年には、宗派 (イスラム教スンニー派とシーア派)の争いが起き、41,822 世帯の家族が避難をし、2012年まで続いた。その間、クラム郡の村が最も破壊の影響を受けた。なお、旧FATAに2つの宗派が混在し争いが起きた地域はクラム郡とオラクザイ郡のみ。

[2] FATA 事務局2014年報告書

11月 16, 2023 水衛生改善 |

2023年10月12日 (木)

洪水後の土地の回復と農業の復興を目指すアリさんの志

 ジェンは、シンド州ダドゥ郡で洪水被害を受けた1,100世帯、約7,150人(世帯平均6.5人)に対し、食糧危機の状況改善を目指して支援活動を行っています。

 この事業では、持続的な作物生産(=生計回復の機会)と回復力強化を目指しています。洪水に強い複数の作物種子に加え、肥料や殺虫剤、農薬、密閉できる種子保存袋を提供しています。事業終了後も地域を支援する意欲のある農家を特定し、「リーダー農家」として、現代的な農法や次の栽培季に利用するための種子を適切に輸送・保管するための研修も実施します。これにより、地域の農家が作物生産を再開し、作物の多様性と収穫量を増やし、次の栽培季に品質の高い種子を入手し、洪水の影響を回避できる場所に保存できます。

 事業参加者のひとり、アリさんのお話を紹介します。マジッド・アリさんは、シンド州ダドゥ郡にあるアルジ・ナイチ村に住んでいます。アリさんは6人の兄弟と妻と子どもの9人家族です。農地を保有し農家として生計を立てていました。

残念なことに、2022 年の洪水の被害は想像を絶するものでした。アリさんの農地は完全に破壊されなすすべもありませんでした。

 一方で、アリさんは、ジェンがこの地域で農業プロジェクトを実施するという知らせを聞いてとても安心しました。他の地元の人びとにとっても同じでした。アリさんの世帯は、ジェンの支援対象世帯の特定条件の一つである「最も支援が届いていない市街地中心から離れた地域に住む世帯」に相当したため、事業参加者の一人として選ばれました。また、地域の農業復活に意欲的なアリさんは「リーダー農家」にも選ばれました。

 アリさんは、「洪水で全滅しましたが、私たちの地域は農産物で有名です。小麦は私たちの地域の主要作物であり、人びとの主な収入源となっています。これからジェンの支援により、地域の人びとの農業が再開し、食べ物のニーズを満たすだけでなく、作物を市場で販売してお金を稼ぐことができると確信しています」と、とても嬉しそうに話してくれました。

 加えて、アリさんは「洪水により、育った作物が失われ、農地も壊滅的な状況ですが、プロジェクトの対象に私たちの村を選んでくれたジェンにとても感謝しています。私を含むこの地域の農家は、自分たちの土地で作物を育てることができるよう、土地の回復を心から望んでいます」とも話してくれました。

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 所有する農地の前に立つアリさん

「私はジェンのアドバイスに従って、土地を準備し、運河の水で1か月間大量に灌漑しました。洪水の影響で蓄積された塩分が浸出しています。私の農地には、肥沃な土地が戻り、今は写真にあるようにラビ栽培[1]の準備が整いました。」とお話されました。

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 この地域の農地は徐々に回復しており、栽培が可能な状態になっている

  

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 耕作の準備ができている農地の様子

 今年(2023年)もパキスタンでは6月下旬頃から8月にかけてモンスーンで大雨が降りました。支援地ダドゥ郡ではこの洪水による大きな被害は確認されなかったものの、今後も洪水に対する懸念は続きます。万一、水害が再び襲いかかることがあったとしても、人びとが自立した生活に立ち戻れるよう、ジェンは、引き続きパキスタンの水害被災者への支援を実施してまいります。改めまして皆さまの温かいご支援に心より感謝申し上げます。

 ※本事業は、ジャパン・プラットフォームからの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

[1] ラビ作物とは、パキスタンやインドなどの南アジアで冬の初め頃植えられ、春頃収穫時期を迎える作物のこと。小麦、タマネギ、ジャガイモなどは、ラビ作物に入る。乾季に栽培が行われるため、灌漑が必要となる。

 

10月 12, 2023 農業支援 |