2024年4月11日 (木)

私たちに希望、健康、幸福を与えてくれた給水計画

 事業参加者のひとり、カイスタさんのお話を紹介します。57歳のカイスタさんは、パキスタンKPK州の旧FATA地域の村に妻と3 人の娘と5人家族でこの地域に長い間住んでいます。

  彼の村は高地に位置し、村びとは、山の泉から飲料水を得るためにロバや手押し車を使い毎日長距離を移動しています。水源が村から1500メートル離れているため、長年にわたって水不足という厳しい課題に直面してきました。

 特に干ばつ期間中は飲み水を確保するのに精一杯で、衛生管理に時間やお金をかけることができなくなり、コミュニティの衛生状態も悪化します。村から離れた丘にある唯一の水源も、蓋などがないため汚れやすい状況でした。

 長年水の問題に苦しんでいた村でしたが、ある日ある日ジェンが、村のすぐそばに水道管やと共同水栓を提供する給水計画をもってきました。この計画には、貯水槽、家畜の水飲み場の建設も含まれていました。

 カイスタさんは、「ジェンの給水プロジェクトによって、コミュニティの中で簡単に清潔な水が手に入るようになりました。地域のニーズを汲み取りながら迅速に改修工事を進め、短期間で水源の修復を完了させ、村の状況が大幅に改善されました」と話してくれました。

 加えて、カイスタさんは、「ジェンは、コミュニティのボランティアと協力して、水と衛生に関するセッションも実施してくれました。これらのセッションは非常に有益で、村の人びとの衛生知識や意識が高まりました。私は、給水計画の完成後、コミュニティにきれいな飲料水が確保され、水衛生促進や健康活動の改善がもたらされたことに、深く感謝しています。私たちに希望、健康、幸福を与えてくれました」と、とても嬉しそうに話してくれました。

 ジェンは、カイバル・パクトゥンクワ(KP)州オラクザイ郡(旧FATA:旧連邦直轄部族地域)で、紛争やテロの影響を受けた人々たちが、安全な飲料水を確保し、維持できるよう、水衛生環境の改善を目指し活動を行っています。

 現在、計画の7ヵ村(1,553世帯)に対し、水衛衛生促進活動を行い、5ヵ村(1,188世帯)の給水施設整備が無事に終了しているところです。 

 

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カイスタさん一家

  
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衛生教育プログラムの実施

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モニタリング時のスタッフと参加者の皆さん

※本事業は、外務省「NGO連携無償資金協力」からの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

 

いつも応援をありがとうございます。
ジェンは厳しい環境にいる人びとに寄り添い、
「自立した生活を取り戻すこと」と「心のケア」を中心に支援活動を行っています。
ジェンとともに「生きる力」を支えてください。

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4月 11, 2024 水衛生改善 |

2024年3月 1日 (金)

現地スタッフからの便り

1月後半に、ジェンの事務局長の木山とプログラムオフィサーの松浦がパキスタンの事務所に来ました。パキスタンの事務所にはパキスタンチームだけでなく、アフガニスタンの同僚チームも来て、空港で久しぶりに再会しました。私や同僚たちはこの日を心待ちにしていました。

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翌日から、早速全体ミーティングです。私はパキスタンのプロジェクト・オフィサーとして、他の職員と共に、現行の事業の進捗について、会議の参加メンバーに説明を行いました。その間、沢山の質問を受け、意見交換を行いました。最終的にはチームの活動をみんなが後押ししてくれました。

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今回、事務局長は、事業地があるシンド州ダドゥ郡の事務所に移動し、実施中の事業を確認して、現地で実施しているセッションに参加してくれました。セッションでは、現地の農民たちの喜びと感謝の声を聴くこともあり、プロジェクトの成果を感じてもらえたとのことです。事務局長に直接現地のチームの活動やその頑張りを見てもらえることは、私にとっても、チームにとっても、やる気につながりました。

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現地での最後の会議では、農業局関係者との話し合いも行われました。枯渇していた農地に、ジェンがプログラムを実施し、リーダー農家を育て、その方々が次の種と指導をしていく仕組みと農作物が順調に育っている報告などを行いました。それを受けて、現地の農業局長やその他関係者からの感謝と期待に満ちた言葉を受けました。私たち現地スタッフは、ジェンの活動が地域に与える影響の大きさを再確認できました。

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帰国前に事務局長からこれからも質の高い事業を続けるよう応援する言葉をもらいました。この訪問を通じて、私たち現地スタッフは、地域の成長と発展に向けて更なる努力を惜しまず前進していくことを誓いました。

 

3月 1, 2024 農業支援 |

2023年12月21日 (木)

フセインさんの話: 洪水被害を受けた農村の復興の光

 2022年にパキスタンで起きた大規模な洪水は多くの死傷者、家屋やインフラの破壊、伝染病、家畜や作物の喪失、土壌の劣化など壊滅的な被害を引き起こしました。ジェンは、最も被害が大きかったシンド州ダドゥ郡で食糧危機の改善を目指し、農業支援を行っています。 

 1,100世帯(約7,150人:世帯平均6.5人)を対象に、洪水に強い複数の作物の種子、肥料殺虫剤、農薬、密閉式種子保存袋を提供し、農家が現代的な農法で耕作するための研修も行いました。これから、次の栽培季用の種子を適切に輸送・保管するための研修を実施する予定です。 

 事業参加者のひとり、フセインさんのお話を紹介します。フセインコソさんは、シンド州ダドゥ郡にあるアリ・ブクス・コソ村に住んでいます。フセインさんは障がいを持っており家族は非常に貧しいです。2 人の妻と 12 人の子ども (女の子 6 人、男の子 6 人) がいます。そのうちの1人は腎臓結石を患っています。 

 フセインさんは、子どもの治療費と農業を再開するための費用を同時にまかなうのが難しく耕作の準備が困難な状況でした。また、2023年になっても洪水の水が引かず、ラビ作物[1]を栽培できる農地がありませんでした。さらに、浸水後の塩害で、2023年はハリフ作物[2] を栽培することもできませんでした。 

[1] Rabi(10 月~4 月)は 10月以降の作付け、4 月ころに収穫される冬作で、小麦などがその中心作物である。

[2] Kharif(4 月中旬~10 月中旬)春から夏に作付され、秋に収穫される夏作で主に米、綿花が中心である。

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 洪水後:荒れてしまったフセインさんの土地  

          

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 洪水後:塩害が発生したフセインさんの土地 

 フセインさんは、「この危機的な状況の中で、ジェンが農地の開拓についてアドバイスをくれました。私は村の仲間の助けを借りて、土地を整備し、運河の水で1か月間灌漑を行いました。蓄積した塩分が溶け出し、農地の肥沃度が回復しました。そして、2024年のラビ栽培の準備が整いました。私はジェンから提供された種子をまき、農業専門家から技術的な研修を受けました。作物の栽培が終わるまで、彼らと連絡を取り続けます」と話してくれました。 

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 村びとの協力を得てレンタルしたトラクターで、土地を整備している様子        

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 種を受け取る様子 

 

 加えて、フセインさんは、「今シーズンは豊作が見込まれており、一部は来年の種として残しておきます。これで今後の家族の食べ物を確保できるよう願っています。私をサポートしてくれたジェンと日本の皆さんに感謝しています」ととても喜んで話してくれました。 

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 村びとの協力で小麦の種まきが終わり、芽が出始めた土地の前で立つフセインさん 


 ジェンは、引き続きパキスタンの水害被災者支援を実施してまいります。改めまして皆さまの温かいご支援に心より感謝申し上げます。
 

 

 ※本事業は、ジャパンプラットフォームからの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。 

 

12月 21, 2023 生計回復事業 |

2023年11月16日 (木)

ガルさんの話:ガワク村に清潔な水をもたらす

 ジェンは、ハイバル・パフトゥンハー(KP)州オラクザイ郡で、紛争や武力抗争の影響を受けた人びとが、安全な飲料水を確保し、維持できるよう、水衛生環境の改善を目指し活動を行っています。7ヵ村(1,553世帯)に対し、水衛生促進活動を行い、内5ヵ村(1,188世帯)に対して、給水施設整備を行っています。

 現在7ヵ村中2ヵ村で、給水施設整備と水衛生促進活動が無事終了しました。

 事業参加者のひとり、ガルさんのお話を紹介します。ソチャ・ガルさんは、KP州オラクザイ郡にあるガワク村に住んでいます。ガルさんは妻、息子3人(内、一人未婚)、娘2人(未婚)、息子の妻2人、孫6人の15人家族です。

 ガルさんの生活は非常に厳しく、苦労の連続でした。特にきれいな水の不足は深刻な問題でした。病気になることも多く、女性や子どもたちは遠方まで水汲みに行かなければなりませんでした。家族がいない時には、ガルさん自身もロバを使って水を汲むことがありました。状況が改善されないことに絶望し、希望を持つことは困難でした。

 その後、ガルさんの村にジェンが訪問し、必要としていた清潔な水を提供するための計画を提案しました。ジェンは、給水タンクや他の設備の修理を行い、泉を保護し、水を集める施設を作り、村の周囲にパイプを敷設し、容易に清潔な水を得ることができる仕組みを整えました。

 ガルさんは、「ジェンは私たちに物をきれいに保つことの重要性を教えるだけでなく、清潔さや健康を保つ方法も教えてくれました。適切な道具や水道の使い方も教えてくれました」と話してくれました。

 加えて、ガルさんは、「ジェンのおかげで私たちの生活は素晴らしい変化を遂げました。長い距離を歩く必要もなく、清潔な水が手に入り、健康や幸福も体験できるようになりました。この例は、人びとが優しさと協力で大きな力を持ち、一緒に未来を変えることができることを示しています。ガワク村のソチャ・グルとしてだけでなく、コミュニティ全体を代表して心からの感謝を申し上げます」と、とても嬉しそうに話してくれました。

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ジェンスタッフに話をするガルさん(右)

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  共同水栓がガルさんの家の前に設置されて、水を遠くまで汲みに行く必要がなくなりました。


 事業実施中のKP州オラクザイ郡は、2018年5月にKP州に合併した旧連邦直轄部族地域(旧FATA)の13郡の内、7つの郡に含まれます。これらの7つの郡は、いずれも水衛生環境が極めて劣悪ですが、特に武力抗争や紛争、宗派間の争い[1]の影響で最も水衛生施設の破壊が激しいオラクザイ郡[2]で、水供給支援事業を実施しました。当郡は、他の郡に比べて継続的に自然災害や紛争、武力抗争の影響を受けており、予測が出来ない不安定な治安の下、パキスタンでは最も取り残された郡の一つとして認識されているからです。

 ジェンは、引き続きパキスタンの水供給支援を実施してまいります。改めまして皆さまの温かいご支援に心より感謝申し上げます。

※本事業は、外務省日本NGO連携無償資金協力からの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

[1] 2007年には、宗派 (イスラム教スンニー派とシーア派)の争いが起き、41,822 世帯の家族が避難をし、2012年まで続いた。その間、クラム郡の村が最も破壊の影響を受けた。なお、旧FATAに2つの宗派が混在し争いが起きた地域はクラム郡とオラクザイ郡のみ。

[2] FATA 事務局2014年報告書

11月 16, 2023 水衛生改善 |

2023年10月12日 (木)

洪水後の土地の回復と農業の復興を目指すアリさんの志

 ジェンは、シンド州ダドゥ郡で洪水被害を受けた1,100世帯、約7,150人(世帯平均6.5人)に対し、食糧危機の状況改善を目指して支援活動を行っています。

 この事業では、持続的な作物生産(=生計回復の機会)と回復力強化を目指しています。洪水に強い複数の作物種子に加え、肥料や殺虫剤、農薬、密閉できる種子保存袋を提供しています。事業終了後も地域を支援する意欲のある農家を特定し、「リーダー農家」として、現代的な農法や次の栽培季に利用するための種子を適切に輸送・保管するための研修も実施します。これにより、地域の農家が作物生産を再開し、作物の多様性と収穫量を増やし、次の栽培季に品質の高い種子を入手し、洪水の影響を回避できる場所に保存できます。

 事業参加者のひとり、アリさんのお話を紹介します。マジッド・アリさんは、シンド州ダドゥ郡にあるアルジ・ナイチ村に住んでいます。アリさんは6人の兄弟と妻と子どもの9人家族です。農地を保有し農家として生計を立てていました。

残念なことに、2022 年の洪水の被害は想像を絶するものでした。アリさんの農地は完全に破壊されなすすべもありませんでした。

 一方で、アリさんは、ジェンがこの地域で農業プロジェクトを実施するという知らせを聞いてとても安心しました。他の地元の人びとにとっても同じでした。アリさんの世帯は、ジェンの支援対象世帯の特定条件の一つである「最も支援が届いていない市街地中心から離れた地域に住む世帯」に相当したため、事業参加者の一人として選ばれました。また、地域の農業復活に意欲的なアリさんは「リーダー農家」にも選ばれました。

 アリさんは、「洪水で全滅しましたが、私たちの地域は農産物で有名です。小麦は私たちの地域の主要作物であり、人びとの主な収入源となっています。これからジェンの支援により、地域の人びとの農業が再開し、食べ物のニーズを満たすだけでなく、作物を市場で販売してお金を稼ぐことができると確信しています」と、とても嬉しそうに話してくれました。

 加えて、アリさんは「洪水により、育った作物が失われ、農地も壊滅的な状況ですが、プロジェクトの対象に私たちの村を選んでくれたジェンにとても感謝しています。私を含むこの地域の農家は、自分たちの土地で作物を育てることができるよう、土地の回復を心から望んでいます」とも話してくれました。

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 所有する農地の前に立つアリさん

「私はジェンのアドバイスに従って、土地を準備し、運河の水で1か月間大量に灌漑しました。洪水の影響で蓄積された塩分が浸出しています。私の農地には、肥沃な土地が戻り、今は写真にあるようにラビ栽培[1]の準備が整いました。」とお話されました。

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 この地域の農地は徐々に回復しており、栽培が可能な状態になっている

  

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 耕作の準備ができている農地の様子

 今年(2023年)もパキスタンでは6月下旬頃から8月にかけてモンスーンで大雨が降りました。支援地ダドゥ郡ではこの洪水による大きな被害は確認されなかったものの、今後も洪水に対する懸念は続きます。万一、水害が再び襲いかかることがあったとしても、人びとが自立した生活に立ち戻れるよう、ジェンは、引き続きパキスタンの水害被災者への支援を実施してまいります。改めまして皆さまの温かいご支援に心より感謝申し上げます。

 ※本事業は、ジャパン・プラットフォームからの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

[1] ラビ作物とは、パキスタンやインドなどの南アジアで冬の初め頃植えられ、春頃収穫時期を迎える作物のこと。小麦、タマネギ、ジャガイモなどは、ラビ作物に入る。乾季に栽培が行われるため、灌漑が必要となる。

 

10月 12, 2023 農業支援 |

2023年9月13日 (水)

2022年の洪水後のウマルさんのお話

 ジェンは、シンド州ダドゥ郡で洪水被害を受けた1,400世帯(約9,100人[1])に、野菜の種子、肥料や農薬、野菜栽培道具キットの緊急配付を終えました。モニタリング時に聞いたウマルさんのお話を紹介します。

 ムハンマド・ウマルさんは、シンド州ダドゥ郡タルカ KN シャー地域にあるランブコ村に住んでいます。彼の家族は妻と 5 人の子どもで、農家として生計を立てていました。

 残念なことに、彼の家族は 2022 年の洪水によって深刻な被害を受けました。洪水により、育った作物が失われ、台所に保管されていた食料も急速に枯渇してしまいました。

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 ウマルさん(一番左)と奥さんと5人の子どもたち

 ちょうどその頃、ウマルさんの世帯は、ジェンの支援対象世帯の特定条件の一つである「最も支援が届いていない市街地中心から離れた地域に住む世帯」に相当したため、事業参加者の一人として選ばれました。数日後、種子、肥料や農薬、野菜栽培道具キットを受け取りました。野菜栽培促進活動の一環で、ウマルさんは技術指導も受けて、農業を中心とした生計回復に着手することができました。

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スタッフから肥料を受け取るウマルさん(左)

 2 か月間にわたる献身的な努力の末、ウマルさんは自分の土地で新鮮な野菜を栽培することに成功しました。この野菜は家族の栄養ニーズを満たすだけでなく、生計を確保するために地元の市場で販売できる余剰品も生み出しました。ウマルさんは、「受けた支援のおかげで、私たち家族は、食事についてそれほど心配がなくなり、私たちの生活ははるかに良くなりました。本当にこの支援に感謝の気持ちでいっぱいです。」と話してくれました。

 今年(2023年)もパキスタンでは6月下旬頃から8月にかけてモンスーンで大雨が降りました。7月27日から30日にかけての国連衛星センター (UNOSAT) の画像は、約 27,000 km2 の⼟地がまたも洪⽔の影響を受け、少なくとも 1,000万⼈が洪⽔にさらされたか、洪⽔の影響を受けた地域の近くに住んでいることを⽰しています。これに伴い、洪水の影響を受けた地域でマラリアの陽性者も増加してしまったとのこと。支援地ダドゥ郡ではこの洪水による大きな被害は確認されなかったものの、今後も洪水に対する懸念は続きます。

 万一、洪水がまた襲ってくることがあったとしても、人びとが自立した暮らしへの回復力を身に付けられるよう、ジェンは、引き続きパキスタンの洪水被災者への支援を届けてまいります。皆さまの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

 

[1] 1世帯平均6.5 人を想定

9月 13, 2023 農業支援 |

2023年6月30日 (金)

シンド州ダドゥ郡で洪水被災者緊急支援「頑張る母親の思い」

ジェンは、シンド州ダドゥ郡で洪水被害を受けた4,005世帯(28,035人)に、食料品(米、油、砂糖、お茶、小麦粉、塩など)の緊急配布を終えました。モニタリング時に聞いたナイーマさんのお話を紹介します。

ナイーマさん(50)は7人の子供の母親で、ダドゥ郡のザヒール・アバド村に住んでいます。2022年のパキスタン洪水の前、彼女は自宅で食料品の小さな店を経営していました。夫のアシムさんが、日払いで週に数日しか仕事が見つからないため、日々家族の食糧を確保するために苦労していました。彼女は、生活の足しになればと数年前から小さな店を始めました。

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ナイーマさんの家族

 

洪水時、村や家に水が押し寄せ、彼らの日常生活は大きな影響を受けました。ナイーマさんは、幸運にも自分の小さな店が朽ち果てることを避けることが出来ました。

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ナイーマさんの小さなお店

 

しかし、彼女の夫は日雇いの仕事を失い、自宅にあった食料以外の品物も洪水で流されてしまいました。彼らの収入は減り、食糧不足に苦しみ始めました。一方で、洗濯や台所などの日常に必要な非食料品の買い替えにもお金を費やす必要がありました。そのため、彼女の家族は、緊急に食糧を必要とする状態に陥りました。 

ちょうど同じ時期に、ジェンの訪問により食糧支援の参加者として登録され、数日後、彼女は食糧のパッケージを受け取りました。この食糧パッケージは、彼女の店からの収入を補う強い力となったと言います。ナイーマさんは、食材を大切に使い、1か月分のパッケージを2か月で使用しました。その間、夫は週に数日の仕事を探すことを再開することが可能になりました。食料面で、彼女の家族の基本的なニーズは、満たされ始めました。

しかし、ナイーマさんは、彼女と故郷の村人たちが、住宅の再建、生計活動(農業や畜産)の再開、健康や教育など、生活の他の側面を回復するにはまだ長い道のりになると語りました。彼女は、政府や非政府組織が、今後生計分野での回復を支援してくれることを希望していますと話してくれました。

2023年6⽉5⽇の時点で、最新の統合⾷糧安全保障段階分類(IPC[1])の調査結果によるとパキスタンが栄養危機に直⾯しており、43 の脆弱な郡で 1,050 万⼈が深刻な⾷料不安を経験していることを示しています。FAOとWFPの報告書によると、20236⽉から11⽉にかけて、860万⼈が深刻なレベルの急性⾷糧不安(IPCフェーズ3以上)に直⾯する可能性があると予測しています[2]

ジェンは、引き続きパキスタンの洪水被災者への支援を届けて参ります。引き続き皆さまの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

 

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家の前の台所のそばにいる子どもたち[3]

 

[3]前々回もお伝えしましたが、この地域においては、冬場を除いて、地面に積み上げたブロックの上に、着火剤(薪)をおいて、マッチで火をつけて、料理をしています。外で料理をするのは通常です。しかし、洪水の被害で、食用油、砂糖、小麦粉、スパイスなどの食品がないという点では、通常ではありません。

 

[1] https://www.ipcinfo.org/

[2]UNOCHA、パキスタン2022 モンスーン洪水 - 状況報告 No.17(2023年6月12日)

 https://reliefweb.int/report/pakistan/pakistan-2022-monsoon-floods-situation-report-no-17-12-june-2023

 

 

6月 30, 2023 洪水被災者支援食糧配布 |

2023年5月18日 (木)

シンド州ダドゥ郡で洪水被災者緊急支援のモニタリングを実施しました。

東京本部スタッフ・松浦とパキスタン事務所スタッフが、ジェンが洪水被災者緊急支援を実施したシンド州ダドゥ郡で、事業実施後のモニタリングを実施しました。

 

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洪水の被害を受けた地域では、多くの人びとが未だにテント生活を送っています。既に気温は35度にも達し、テントでの暮らしは暑さで厳しさを増しています。

 

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未だに多くの方がたがテント生活を送っています

 

ジェンは洪水で被災された方への緊急支援として、現地の食文化に合わせた米(バスマティ米)、小麦、ビタミン強化型の植物油、数種類の豆、塩、紅茶、砂糖、粉ミルクの入った食糧パッケージを配付しました。

ジェンの配布した食糧は大切に消費されていることが確認できましたが、食糧源であり収入源であった農地が壊滅的な被害を受けたため、人びとは未だに食糧不足に悩まされています。食事の量や回数を減らし、生き残った家畜のミルクでなんとかしのいでいますが、限られた日雇い労働の機会では、インフレによる物価高で、家を再建する費用を賄うことも困難です。

 

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農地は洪水で深刻な被害を受けました。

 

洪水以前からあった課題も明らかになりました。訪問した村では政府が生活用水を供給していましたが、供給が途切れることもあるため、井戸水も利用していました。その井戸水はカナダのNGOから安全ではないと言われたものだそうですが、他に選択肢がないため、使い続けているとのこと。

被災された方がたの困難は多岐にわたっていますが、ジェンが配布した食糧を受け取られたある女性は、「このような厳しいときでも、紅茶を飲むことが出来るのは本当に幸せです。」と満面の笑顔でお話されました。現地の文化を尊重した支援を行うことは、被災された方の心のケアにもつながっていることを実感しました。

 

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厳しいときでも、紅茶を飲むことの出来る幸せを語られたラニさん(中央の赤いスカーフの女性)

 

被災された方がたにとって、農業を再開し、洪水前のように、自ら食べ物を作ることが出来るようになることが、生活再建の第一歩となります。

ジェンは、大洪水で被災された方がたに対し、食糧配布から農業復興を通じた生活再建に軸足を移し、引き続き支援を行っていきます。

5月 18, 2023 洪水被災者支援 |

2023年3月20日 (月)

シンド州ダドゥ郡で洪水被災者緊急支援第二弾を実施しています。

国連衛星センター(UNOSAT)の画像によると、パキスタンで中部や南部を中心に広範囲に20226月以降に発生した洪水により、依然として推定で450万人が水にさらされ、またはその近くに住んでいます。推定110万人が、不十分な支援により、食料安全保障の状況は悪化していると言われています(UNOCHA・モンスーン洪水の状況報告27日付)

洪水で被災した人びとは、農業や家畜に頼って生活していますが、シンド州は約377万エーカーと農作物や果樹園被害が大きく、1,230万人が被災しました。中でも、ダドゥ郡はシンド州内でも最も浸水被害が大きい郡になります。97,330エーカーの農地が被害を受け、約95万人が直接被害を受けました。回復した農地は極めて小さいものの、野菜栽培に必要な種子や農具などを入手できる余裕が各世帯にありません。また、洪水被害に対応した野菜栽培に関する知識や技術も普及していません。

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未だに洪水の水で覆われる被災地域(シンド州ダドゥ郡)

 

ジェンのパキスタン事務所は、ピースウィンズ・ジャパン様と提携し、最も被害の大きいシンド州の中でも特に支援が行き届いていない郡の一つ、ダドゥで緊急支援第二弾を実施します。合計1,400世帯に、種子・野菜栽培道具キットを配付します。また、野菜栽培促進活動による洪水被害に対応した知識や技術の普及を通して、被災した農家の野菜栽培の再開を目指します。2月から4月の間に夏季の種の植え付けが出来れば、5月から7月の間に収穫が出来る予定です。

 

先日現地事業開始後の現地訪問(3月中旬)で、ダドゥ県ワリ・ダッド村に住むバニアさんからお話を聞きました。彼女は一人で仮設住宅に住んでいました。結婚していないため、家族はいません。洪水以前は自宅で小規模の野菜を作っていました。彼女は農作業で畑を耕し、そこから穀物(小麦)を得ていました。しかし、洪水で家も野菜畑も壊れ、農具も流されました。村人たちに助けられ、その場しのぎで家を建て直しました。今、自宅での野菜作りを再開することが切実に求められています。野菜は彼女の毎日の食事に欠かせないものだからです。

 

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台所のそばに座るバニアさん

 

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住まいの前に立つバニアさん

 

引き続き皆さまの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

3月 20, 2023 緊急支援 |

2023年2月 2日 (木)

クラム県の教育環境改善支援事業完了の報告

20216月下旬から実施してきた「パキスタン・ハイバル・パフトゥンハー州クラム県における子どもたちの教育環境改善支援事業」が完了しました。

テロや紛争、宗派間の争いの影響で、学校設備や衛生施設が破壊された対象地域の8校で、破壊された設備や施設の整備を行いました。合計3,187人(男子学生80 人、女子学生3,022人、教師29人、日本の学校のPTAのような存在である既存の両親教師委員会(PTC: Parents Teachers Committee)のメンバー56)に対して、衛生教育、心のケアや施設の使用(PTCに対しては維持管理を含む)に関する啓発を行いました。これらは外務省が実施する日本 NGO 連携無償資金協力の資金協力および皆様からの温かいご支援により、実施することができました。心より御礼申し上げます。 

この事業によって、生徒が安心して学校で教育を受けられる環境が整えられ、衛生知識や適切な学校施設の使用や心のケアに対する理解も深まりました。この事業を無事に完了でき、ご協力してくださったすべての地域関係者にも感謝しています。

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完成した教室内の席につく生徒たち

 

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2月 2, 2023 教育支援学校修復・建設衛生教育 |