2024年5月 9日 (木)

洪水からの復興: シードシェア(種の共有)で再び立ち上がったモハメドさん

私はモハメド・アリと言います。ダドゥ郡の住民です。

私の家族は私と妻、息子 1 人、娘 4 人の7人です。子どもたちはそれぞれが勉強に励んでおり、長女は大学の卒業を目指しています。

2022 年の洪水で、家屋やインフラが破壊され、作物や種子や農業資材、ヤギ 2 頭と牛 3 頭を失ってしまいました。その痛みを忘れることはできません。この災害の後、長い間種子を購入したり、耕作に備えたりすることができませんでした。

ある日、私たちの地域で洪水の被害を受けた農家に農業支援を提供しているNGOであるジェンについて知りました。私たちの村が農業支援事業の対象となりました。

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種子の提供を受けるモハメドさん

ジェンが私たちに小麦・大麦・からし菜の在来種の種子やその他の農業資材(肥料、殺虫剤、種子保存袋、農法研修など)を提供してくれたことを、とてもうれしく思いました。これらは、弱い立場にある私たち家族にとって、とても貴重なもジェン農業チームと一緒に、学んだ内容について他の農家に研修をすることになりました。ジェン農業チームと協力し、技術を学びながら、それを栽培に応用しました。その結果、私の能力が飛躍的に向上し、ジェンから「最高の農家賞」に選ばれました。


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「最高の農家賞」受賞の様子

一生懸命努力し作業した結果、ようやく小麦や野菜を収穫することができ、これからも生産が期待できます。私の家族にとっては十分な量です。たくさん収穫できた種子の中から、最初に受け取った種子と同じ分量の種子を新たに2軒の農家に分けることで、活動に参加する農家が増えていきます。

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収穫の様子

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収穫した麦とモハメドさん

さらに、ジェンから追加で夏野菜の種子が配付されるという朗報を聞きました。これは家庭用だけでなく、市場で販売するのにも大変役立ちます。すでにこの種を受け取ったので、すぐに栽培を始められることに興奮しています。

最後に、種子や資材、現代の農業技術という貴重な贈り物を私たちに提供してくださったジェンに心から感謝しています。


このように、モハメド・アリさんは笑顔で話してくれました。当初は洪水の際無力だったと話していたモハメドさんが一生懸命に農作業をしていたのを、近くで見ていました。彼が自給自足できるようになり、新たな可能性を開けたことで、インタビューをした私も、とても嬉しく思いました。モハメドさんは、収穫した種の一部を他の世帯へ提供すること、得た知識を他の世帯に伝えることを楽しみにしています。私は、被災した地域の人びとが、希望を持ちながらより良い暮らしができることを心から願っています。

Qaisar:プロジェクト・オフィサー)

 ※本事業は、株式会社ゼンショーホールディングスからの寄付金やジェンへの寄付金により実施しています。

いつも応援をありがとうございます。
ジェンは厳しい環境にいる人びとに寄り添い、
「自立した生活を取り戻すこと」と「心のケア」を中心に支援活動を行っています。
ジェンとともに「生きる力」を支えてください。

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5月 9, 2024 洪水被災者支援農業支援 |

2023年6月30日 (金)

シンド州ダドゥ郡で洪水被災者緊急支援「頑張る母親の思い」

ジェンは、シンド州ダドゥ郡で洪水被害を受けた4,005世帯(28,035人)に、食料品(米、油、砂糖、お茶、小麦粉、塩など)の緊急配布を終えました。モニタリング時に聞いたナイーマさんのお話を紹介します。

ナイーマさん(50)は7人の子供の母親で、ダドゥ郡のザヒール・アバド村に住んでいます。2022年のパキスタン洪水の前、彼女は自宅で食料品の小さな店を経営していました。夫のアシムさんが、日払いで週に数日しか仕事が見つからないため、日々家族の食糧を確保するために苦労していました。彼女は、生活の足しになればと数年前から小さな店を始めました。

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ナイーマさんの家族

 

洪水時、村や家に水が押し寄せ、彼らの日常生活は大きな影響を受けました。ナイーマさんは、幸運にも自分の小さな店が朽ち果てることを避けることが出来ました。

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ナイーマさんの小さなお店

 

しかし、彼女の夫は日雇いの仕事を失い、自宅にあった食料以外の品物も洪水で流されてしまいました。彼らの収入は減り、食糧不足に苦しみ始めました。一方で、洗濯や台所などの日常に必要な非食料品の買い替えにもお金を費やす必要がありました。そのため、彼女の家族は、緊急に食糧を必要とする状態に陥りました。 

ちょうど同じ時期に、ジェンの訪問により食糧支援の参加者として登録され、数日後、彼女は食糧のパッケージを受け取りました。この食糧パッケージは、彼女の店からの収入を補う強い力となったと言います。ナイーマさんは、食材を大切に使い、1か月分のパッケージを2か月で使用しました。その間、夫は週に数日の仕事を探すことを再開することが可能になりました。食料面で、彼女の家族の基本的なニーズは、満たされ始めました。

しかし、ナイーマさんは、彼女と故郷の村人たちが、住宅の再建、生計活動(農業や畜産)の再開、健康や教育など、生活の他の側面を回復するにはまだ長い道のりになると語りました。彼女は、政府や非政府組織が、今後生計分野での回復を支援してくれることを希望していますと話してくれました。

2023年6⽉5⽇の時点で、最新の統合⾷糧安全保障段階分類(IPC[1])の調査結果によるとパキスタンが栄養危機に直⾯しており、43 の脆弱な郡で 1,050 万⼈が深刻な⾷料不安を経験していることを示しています。FAOとWFPの報告書によると、20236⽉から11⽉にかけて、860万⼈が深刻なレベルの急性⾷糧不安(IPCフェーズ3以上)に直⾯する可能性があると予測しています[2]

ジェンは、引き続きパキスタンの洪水被災者への支援を届けて参ります。引き続き皆さまの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

 

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家の前の台所のそばにいる子どもたち[3]

 

[3]前々回もお伝えしましたが、この地域においては、冬場を除いて、地面に積み上げたブロックの上に、着火剤(薪)をおいて、マッチで火をつけて、料理をしています。外で料理をするのは通常です。しかし、洪水の被害で、食用油、砂糖、小麦粉、スパイスなどの食品がないという点では、通常ではありません。

 

[1] https://www.ipcinfo.org/

[2]UNOCHA、パキスタン2022 モンスーン洪水 - 状況報告 No.17(2023年6月12日)

 https://reliefweb.int/report/pakistan/pakistan-2022-monsoon-floods-situation-report-no-17-12-june-2023

 

 

6月 30, 2023 洪水被災者支援食糧配布 |

2023年5月18日 (木)

シンド州ダドゥ郡で洪水被災者緊急支援のモニタリングを実施しました。

東京本部スタッフ・松浦とパキスタン事務所スタッフが、ジェンが洪水被災者緊急支援を実施したシンド州ダドゥ郡で、事業実施後のモニタリングを実施しました。

 

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洪水の被害を受けた地域では、多くの人びとが未だにテント生活を送っています。既に気温は35度にも達し、テントでの暮らしは暑さで厳しさを増しています。

 

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未だに多くの方がたがテント生活を送っています

 

ジェンは洪水で被災された方への緊急支援として、現地の食文化に合わせた米(バスマティ米)、小麦、ビタミン強化型の植物油、数種類の豆、塩、紅茶、砂糖、粉ミルクの入った食糧パッケージを配付しました。

ジェンの配布した食糧は大切に消費されていることが確認できましたが、食糧源であり収入源であった農地が壊滅的な被害を受けたため、人びとは未だに食糧不足に悩まされています。食事の量や回数を減らし、生き残った家畜のミルクでなんとかしのいでいますが、限られた日雇い労働の機会では、インフレによる物価高で、家を再建する費用を賄うことも困難です。

 

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農地は洪水で深刻な被害を受けました。

 

洪水以前からあった課題も明らかになりました。訪問した村では政府が生活用水を供給していましたが、供給が途切れることもあるため、井戸水も利用していました。その井戸水はカナダのNGOから安全ではないと言われたものだそうですが、他に選択肢がないため、使い続けているとのこと。

被災された方がたの困難は多岐にわたっていますが、ジェンが配布した食糧を受け取られたある女性は、「このような厳しいときでも、紅茶を飲むことが出来るのは本当に幸せです。」と満面の笑顔でお話されました。現地の文化を尊重した支援を行うことは、被災された方の心のケアにもつながっていることを実感しました。

 

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厳しいときでも、紅茶を飲むことの出来る幸せを語られたラニさん(中央の赤いスカーフの女性)

 

被災された方がたにとって、農業を再開し、洪水前のように、自ら食べ物を作ることが出来るようになることが、生活再建の第一歩となります。

ジェンは、大洪水で被災された方がたに対し、食糧配布から農業復興を通じた生活再建に軸足を移し、引き続き支援を行っていきます。

5月 18, 2023 洪水被災者支援 |

2022年12月15日 (木)

シンド州ダドゥ郡で洪水被災者緊急支援を実施しています。

パキスタンで中部や南部を中心に広範囲に発生した洪水により90もの郡に被害が及び、3,300万人以上が被災しています。2022年6月以降のモンスーンによる異常な豪雨が原因です。死傷者は、14,606人(死者1,739人、負傷者12,867人)とされ、228万戸以上の家屋が全半壊しています。また、低所得の家畜農家の経済的な生命線であるにも関わらず、116万頭以上の家畜が死亡しました。1万3千キロ以上の道路と、439の橋が被害にあっています(パキスタン国家災害管理局・11月18日付)。

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洪水の水で覆われる被災地域(シンド州ダドゥ郡)

特に、シンド州の洪水被災者は、深刻な食糧危機に陥っています。調査では、シンド州で被災した回答者の90% が、家族に十分な食料を供給できない状況にあると分かりました。 

ジェンのパキスタン事務所は、ピースウィンズ・ジャパン様と提携し、最も被害の大きいシンド州の中でも特に支援が行き届いていない郡の一つ、ダドゥで緊急支援を実施します。合計2,538世帯に、食糧パッケージ1カ月分を配付します。また、被災地では既に、蚊が媒介する伝染病や水を原因とする病気などへの懸念が高まっているため石鹸、蚊帳等を合わせて配付する予定です。

先日事業開始後の現地訪問(11月下旬)で、村全体が洪水で流されたダドゥ郡の被災地「パリヤ」町を訪れました。平均60センチ程、家が水に覆われているものの、一部の場所では道路にアクセスできるようになりました。写真(下)の男性や他の村人たちは、水が引いたので最近戻ってきました。家屋の瓦礫を集め、自分たちの手で再建を始めています。家だけでなく、作物やその他の資産も破壊され、復旧にはこれから長い時間がかかると思われます。

引き続き皆さまの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

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調査で訪問した村の様子。積みあがっているのは集めて再利用するという家のがれき。

12月 15, 2022 支援物資配布緊急支援洪水被災者支援食糧配布 |

2015年7月30日 (木)

洪水と備え

 パキスタンでは、4月~5月がプレ・モンスーン、6月~8月がモンスーンの季節です。今年も、このプレ・モンスーンとモンスーンの大雨がパキスタンを襲い、各地に洪水をもたらしました。被害は23県に及び、死者81人、負傷者45人、損壊家屋1,921戸、172,016人の人々がより安全な場所に避難し、全部で793の村が被害を受けました(出典:パキスタン災害対策本部の状況報告。2015年7月28日時点)。

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 ハイバル・パフトゥンハー州ではチットラル地区とパンジャブ州の6つの地区が最も大きな被害を受け、シンド州では数日内に洪水が起きる可能性があります。パキスタンの気象庁は、来週さらに雨が降ると予報しています。

 避難所の設置やその他の緊急対応がスタートし、中央および州政府が努力を続けています。パキスタン軍は被災地域で人々の救助や避難のための活動に従事しています。
毎年パキスタンのさまざまな地域が洪水に見舞われているので、被害にあった人々を助けるために巨額の資金が使われているのは止むを得ないことですが、もしコミュニティーの災害からの回復力を増すための対策が取られれば、被害を減らすことができるでしょう。

 これに関しては、政府や多くの国際・国内NGOが防災研修を行っていますが、より大きなコミュニティーのインフラ開発を支援しつつ、このような研修の規模を拡大する必要があります。
 それは基本的には政府の責任であり、実際、政府(特に、国家災害対策本部)が今後の災害に対処するための計画を立てていますが、必要とされるインフラ整備やコミュニティーでの訓練が追いつかないのが現状です。
 そこで、防災のための専門知識や能力を持ったさまざまな組織による支援が重要となります。

 人道支援組織や緊急支援組織は、コミュニティーの防災意識を高めるための効果的で重要な役割を担うことができます。それにより、中央と地方政府の負担を減らすこと、人々の苦しみを最小限にすることができるでしょう。

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7月 30, 2015 洪水被災者支援 |

2015年4月 9日 (木)

パンジャブ州洪水被災者の今

 今年3月の終わりに、JENの現場チームはパンジャブ州南部のムザファ・ガー県を訪れました。昨年12月から今年1月上旬にかけて行った、洪水被災者の方への緊急物資配布後のモニタリングを行うためです。

 モニタリングでは、そのプロジェクトの対象となった被災者の方々が、受け取った物資を十分に活用していることが確認できました。

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 訪問の際に見られた対象地域の前向きな変化は、小麦が収穫できるまでに育っていたことでした。被災者の人たちは小麦を十分に育てられることを願っていたため、このことを、喜んでいました。小麦が育てば、次のシーズンまでパンが作れるからです。

 被災者の方々は、去年洪水が家や収穫前の水田に深刻な打撃を与えた厳しい状況の下で、小麦の種をまいたのでした。今回の訪問の際には、これらの人々は春の陽気を楽しみ、「雄牛レース」などの地域行事に熱中していました。

 しかし、JENのチームは、これらの被災者の生活にはまだまだ課題があることにも気づきました。もっとも深刻な問題は、家屋の再建が遅れていることや、晩冬の激しい雨により再び洪水が起こる危険があることです。被災者はほとんど自分たちで手に入れた材料を使って未だに家を建て直している最中で、そのスピードはとても遅いのです。

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 パキスタンは、気候変動に最も影響されやすい国の1つに挙げられています。ここ数年のパキスタンにおける洪水は非常に恐ろしいもので、2010年~2014年にかけては毎年、人命、家畜、収穫前の穀物、インフラや公共資産に深刻な打撃を与えてきました。

 今こそ政府と人道支援機関は従来の発想にとらわれずに、災害が起きてから対応するだけではなく、むしろ、災害管理における長期的な開発計画を立てるべきです。そうすることによって、毎年の洪水による被災リスクを軽減し、積極的かつ適切な人道支援が期待できるようになるはずです。



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4月 9, 2015 洪水被災者支援 |