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2025年5月29日 (木)

広がるシードシェアの輪~タリクさんの力強い復活~

 タリク・カーンさんは、シンド州ダドゥ郡に住む農民です。家族4人で暮らし、収入の多くを農業と家畜の飼育で得ていました。しかし、2022年の大規模な洪水で、収穫した米、綿花、唐辛子などの作物をすべて失い、その経済的損失は約100万パキスタン・ルピー(約53万円相当)にものぼりました。洪水による病気で2匹のヤギも失いました。

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 この未曾有の災害後、タリクさんは種や必要な農業資材を購入する余裕がなく、商人から借金をして再び農業を始めることになりました。

 そんな中、ジェンの農業支援「シードシェア」が始まりました。洪水で被災した中でも最も脆弱な農家185軒に、種子と肥料、収穫した種用の密閉袋を配布。そして、その中から選ばれたリーダー農家が専門家から研修を受け、学んだ知識を他の農家に伝えます。参加農家は収穫した作物から採れた種子のうち、自身が受け取ったのと同量の種子を、地域の他の2軒の農家に提供し、研修も受けます。

 タリクさんは、洪水に強く、高収量が見込め、環境にも適した小麦、大麦、カラシの種、肥料や農薬を受け取り、再び農地を耕して栽培することができました。次の季節に向けて種を採取し、家族の食糧を確保するとともに、余剰の作物を市場で販売し、借金を返済しました。また、困窮している他の2人の農家にも小麦、大麦、カラシの種を提供しました。

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 タリクさんは適切な灌漑方法や肥料の使い方、害虫の識別、農業局との連携について学びました。また、大麦粉やカラシ油の栄養価についても知識を深め、市場の油と混ぜることで健康に良い効果が得られることを実感しました。彼は他の農家にも沢山の有益な情報を自発的に伝えています。
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 タリクさんは、学んだ情報を最大限に生かし、次の収穫時期で大麦の栽培面積を4倍に、カラシの面積を2倍に広げることができました。

 今年1月からは第二期の支援が始まりました。肥料などを配布し、リーダー農家が専門家から研修を受け、370軒に対して研修を行います。そして、タリクさんのように、収穫された種の一部を他の2世帯に提供します。これによりシードシェアの輪が広がっていきます。

 タリクさんは、ジェンの事業と皆さまからのご支援に感謝の意を表しました。特に、提供された種が農業に大きな役割を果たしたと語っています。この支援により、食糧不安が解消され、将来の災害への備えが整い、持続可能な農業と地域社会の復興に向けた一歩を踏み出すことができました。

5月 29, 2025 生計回復事業 |