道路を彩る芸術–パキスタンのトラックアート「デコトラ」
南アジア、特にパキスタンに深く根付トラックアート「デコトラ」は、ただの装飾にとどまらず、何世代にもわたる文化の継承と誇りを象徴しています。その起源はインダス渓谷文明(紀元前2600〜1700年)に遡り、人びとは船や輸送動物に精緻な装飾を施してきました。この伝統は、ムガル帝国の時代に最高潮を迎え、現在に至るまで絶えず進化しています。
特にカラチ市は中心的な役割を果たしており、全国から集まる芸術家や職人がその伝統を現代的に発展させています。
トラックは目を見張るような色彩やデザインで飾られ、まるで動くアート作品のようです。装飾には花のモチーフや美しい書道が施され、シンド州とパンジャブ州では特別な意味を持ちます。
トラックの所有者や運転手たちは、道路を走るその瞬間が誇りであり、個々のトラックが唯一無二の「物語」や信念、人生観、文化的背景を語るものだと考えてられています。
私たちはパンジャブ州デラ・ガージ・カーンに住むトラック運転手、サンワルさんにお話を伺いました。サンワルさんは、15年の運転経験を持ち、トラックアートの進化を目の当たりにしてきました。彼によると、「ロケット」や「日野7D(10輪車)」など、特定のモデルが装飾に特に人気があります。
トラックのデザインには、「ニッケル・プラスチック」や「チャマク・パティ[1]」などの高度な技術が使用されます。職人たちは各々のトラックに命を吹き込むかのようにデザインを施し、その装飾費用は200万ルピーから400万ルピー(2025年1月30日現在、1パキスタンルピー≒0.55円)に及ぶこともあります。
デラ・ガージ・カーンは、まさにこの伝統の中心地であり、この地域全体の誇りとなっています。
トラックアートの製作には通常1カ月半から2カ月を要します。その過程は単なる美的表現にとどまらず、トラックオーナーの文化的な誇りや地域社会との絆を深める重要な意味を持っています。
さらに、反射素材を利用したデザインは夜間の視認性を高め、道路上での安全性を確保するという実用的な役割も果たしています。
ジェンは、パキスタンのシンド州で、2022年の洪水の影響を受けた人びとの生活環境の改善と自立を目指した活動を続けています。トラックアートにこめられた文化的な背景や情熱を理解し、この美しい伝統とともに、困難な状況にある人々の未来も支える活動に引き続きご協力ください。
[1] Chamak Patti チャマック パティ (チャマックは光沢、パティはステッカーの意味) は、暗闇で光る反射テープを使った芸術。
Herald:Web新聞Seeking paradise: The image and reality of truck art“
by Zehra Nawab,Updated 14 Nov, 2017 https://herald.dawn.com/news/1153417