フセインさんの話: 洪水被害を受けた農村の復興の光
2022年にパキスタンで起きた大規模な洪水は、多くの死傷者、家屋やインフラの破壊、伝染病、家畜や作物の喪失、土壌の劣化など、壊滅的な被害を引き起こしました。ジェンは、最も被害が大きかったシンド州ダドゥ郡で、食糧危機の改善を目指し、農業支援を行っています。
1,100世帯(約7,150人:世帯平均6.5人)を対象に、洪水に強い複数の作物の種子、肥料、殺虫剤、農薬、密閉式種子保存袋を提供し、農家が現代的な農法で耕作するための研修も行いました。これから、次の栽培季用の種子を適切に輸送・保管するための研修を実施する予定です。
事業参加者のひとり、フセインさんのお話を紹介します。フセイン・コソさんは、シンド州ダドゥ郡にあるアリ・ブクス・コソ村に住んでいます。フセインさんは障がいを持っており、家族は非常に貧しいです。2 人の妻と 12 人の子ども (女の子 6 人、男の子 6 人) がいます。そのうちの1人は腎臓結石を患っています。
フセインさんは、子どもの治療費と農業を再開するための費用を同時にまかなうのが難しく、耕作の準備が困難な状況でした。また、2023年になっても洪水の水が引かず、ラビ作物[1]を栽培できる農地がありませんでした。さらに、浸水後の塩害で、2023年はハリフ作物[2] を栽培することもできませんでした。
[1] Rabi(10 月~4 月)は 10月以降の作付け、4 月ころに収穫される冬作で、小麦などがその中心作物である。
[2] Kharif(4 月中旬~10 月中旬)春から夏に作付され、秋に収穫される夏作で主に米、綿花が中心である。
洪水後:荒れてしまったフセインさんの土地
洪水後:塩害が発生したフセインさんの土地
フセインさんは、「この危機的な状況の中で、ジェンが農地の開拓についてアドバイスをくれました。私は村の仲間の助けを借りて、土地を整備し、運河の水で1か月間灌漑を行いました。蓄積した塩分が溶け出し、農地の肥沃度が回復しました。そして、2024年のラビ栽培の準備が整いました。私はジェンから提供された種子をまき、農業専門家から技術的な研修を受けました。作物の栽培が終わるまで、彼らと連絡を取り続けます」と話してくれました。
村びとの協力を得てレンタルしたトラクターで、土地を整備している様子
種を受け取る様子
加えて、フセインさんは、「今シーズンは豊作が見込まれており、一部は来年の種として残しておきます。これで今後の家族の食べ物を確保できるよう願っています。私をサポートしてくれたジェンと日本の皆さんに感謝しています」ととても喜んで話してくれました。
村びとの協力で小麦の種まきが終わり、芽が出始めた土地の前で立つフセインさん
ジェンは、引き続きパキスタンの水害被災者支援を実施してまいります。改めまして皆さまの温かいご支援に心より感謝申し上げます。
※本事業は、ジャパンプラットフォームからの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。