ガルさんの話:ガワク村に清潔な水をもたらす
ジェンは、ハイバル・パフトゥンハー(KP)州オラクザイ郡で、紛争や武力抗争の影響を受けた人びとが、安全な飲料水を確保し、維持できるよう、水衛生環境の改善を目指し活動を行っています。7ヵ村(1,553世帯)に対し、水衛生促進活動を行い、内5ヵ村(1,188世帯)に対して、給水施設整備を行っています。
現在7ヵ村中2ヵ村で、給水施設整備と水衛生促進活動が無事終了しました。
事業参加者のひとり、ガルさんのお話を紹介します。ソチャ・ガルさんは、KP州オラクザイ郡にあるガワク村に住んでいます。ガルさんは妻、息子3人(内、一人未婚)、娘2人(未婚)、息子の妻2人、孫6人の15人家族です。
ガルさんの生活は非常に厳しく、苦労の連続でした。特にきれいな水の不足は深刻な問題でした。病気になることも多く、女性や子どもたちは遠方まで水汲みに行かなければなりませんでした。家族がいない時には、ガルさん自身もロバを使って水を汲むことがありました。状況が改善されないことに絶望し、希望を持つことは困難でした。
その後、ガルさんの村にジェンが訪問し、必要としていた清潔な水を提供するための計画を提案しました。ジェンは、給水タンクや他の設備の修理を行い、泉を保護し、水を集める施設を作り、村の周囲にパイプを敷設し、容易に清潔な水を得ることができる仕組みを整えました。
ガルさんは、「ジェンは私たちに物をきれいに保つことの重要性を教えるだけでなく、清潔さや健康を保つ方法も教えてくれました。適切な道具や水道の使い方も教えてくれました」と話してくれました。
加えて、ガルさんは、「ジェンのおかげで私たちの生活は素晴らしい変化を遂げました。長い距離を歩く必要もなく、清潔な水が手に入り、健康や幸福も体験できるようになりました。この例は、人びとが優しさと協力で大きな力を持ち、一緒に未来を変えることができることを示しています。ガワク村のソチャ・グルとしてだけでなく、コミュニティ全体を代表して心からの感謝を申し上げます」と、とても嬉しそうに話してくれました。
ジェンスタッフに話をするガルさん(右)
共同水栓がガルさんの家の前に設置されて、水を遠くまで汲みに行く必要がなくなりました。
事業実施中のKP州オラクザイ郡は、2018年5月にKP州に合併した旧連邦直轄部族地域(旧FATA)の13郡の内、7つの郡に含まれます。これらの7つの郡は、いずれも水衛生環境が極めて劣悪ですが、特に武力抗争や紛争、宗派間の争い[1]の影響で最も水衛生施設の破壊が激しいオラクザイ郡[2]で、水供給支援事業を実施しました。当郡は、他の郡に比べて継続的に自然災害や紛争、武力抗争の影響を受けており、予測が出来ない不安定な治安の下、パキスタンでは最も取り残された郡の一つとして認識されているからです。
ジェンは、引き続きパキスタンの水供給支援を実施してまいります。改めまして皆さまの温かいご支援に心より感謝申し上げます。
※本事業は、外務省日本NGO連携無償資金協力からの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。
[1] 2007年には、宗派 (イスラム教スンニー派とシーア派)の争いが起き、41,822 世帯の家族が避難をし、2012年まで続いた。その間、クラム郡の村が最も破壊の影響を受けた。なお、旧FATAに2つの宗派が混在し争いが起きた地域はクラム郡とオラクザイ郡のみ。
[2] FATA 事務局2014年報告書