シンド州ダドゥ郡で洪水被災者緊急支援「頑張る母親の思い」
ジェンは、シンド州ダドゥ郡で洪水被害を受けた4,005世帯(28,035人)に、食料品(米、油、砂糖、お茶、小麦粉、塩など)の緊急配布を終えました。モニタリング時に聞いたナイーマさんのお話を紹介します。
ナイーマさん(50)は7人の子供の母親で、ダドゥ郡のザヒール・アバド村に住んでいます。2022年のパキスタン洪水の前、彼女は自宅で食料品の小さな店を経営していました。夫のアシムさんが、日払いで週に数日しか仕事が見つからないため、日々家族の食糧を確保するために苦労していました。彼女は、生活の足しになればと数年前から小さな店を始めました。
ナイーマさんの家族
洪水時、村や家に水が押し寄せ、彼らの日常生活は大きな影響を受けました。ナイーマさんは、幸運にも自分の小さな店が朽ち果てることを避けることが出来ました。
ナイーマさんの小さなお店
しかし、彼女の夫は日雇いの仕事を失い、自宅にあった食料以外の品物も洪水で流されてしまいました。彼らの収入は減り、食糧不足に苦しみ始めました。一方で、洗濯や台所などの日常に必要な非食料品の買い替えにもお金を費やす必要がありました。そのため、彼女の家族は、緊急に食糧を必要とする状態に陥りました。
ちょうど同じ時期に、ジェンの訪問により食糧支援の参加者として登録され、数日後、彼女は食糧のパッケージを受け取りました。この食糧パッケージは、彼女の店からの収入を補う強い力となったと言います。ナイーマさんは、食材を大切に使い、1か月分のパッケージを2か月で使用しました。その間、夫は週に数日の仕事を探すことを再開することが可能になりました。食料面で、彼女の家族の基本的なニーズは、満たされ始めました。
しかし、ナイーマさんは、彼女と故郷の村人たちが、住宅の再建、生計活動(農業や畜産)の再開、健康や教育など、生活の他の側面を回復するにはまだ長い道のりになると語りました。彼女は、政府や非政府組織が、今後生計分野での回復を支援してくれることを希望していますと話してくれました。
2023年6⽉5⽇の時点で、最新の統合⾷糧安全保障段階分類(IPC[1])の調査結果によるとパキスタンが栄養危機に直⾯しており、43 の脆弱な郡で 1,050 万⼈が深刻な⾷料不安を経験していることを示しています。FAOとWFPの報告書によると、2023年6⽉から11⽉にかけて、860万⼈が深刻なレベルの急性⾷糧不安(IPCフェーズ3以上)に直⾯する可能性があると予測しています[2]。
ジェンは、引き続きパキスタンの洪水被災者への支援を届けて参ります。引き続き皆さまの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
家の前の台所のそばにいる子どもたち[3]
[3]前々回もお伝えしましたが、この地域においては、冬場を除いて、地面に積み上げたブロックの上に、着火剤(薪)をおいて、マッチで火をつけて、料理をしています。外で料理をするのは通常です。しかし、洪水の被害で、食用油、砂糖、小麦粉、スパイスなどの食品がないという点では、通常ではありません。
[1] https://www.ipcinfo.org/
[2]UNOCHA、パキスタン2022 モンスーン洪水 - 状況報告 No.17(2023年6月12日)