一人の小作人の苦しみ
2010年7月29日に起こった大洪水はハイバル・パトゥンハー州のいくつかの地域に大きな被害をもたらしました。チャルサダの集落にまで水が押し寄せ、洪水を予期していなかった住民たちは着の身着のまま避難しようとしましたが、一日かけても避難できず取り残された人たちも多くいたのです。
大洪水によっておきた被害は想像をはるかに超えるものでした。道路、橋、道、建物といったインフラや水衛生施設はもちろん、農地や家畜なども大きな被害を受け、特に、農地に関しては、何千エーカーもの農地は水につかり、収穫された農産物までが全くものにならなくなりました。
カティガーン(チャルサダ県のウトマンザイ地区労働組合)に所属する住民であるムハンマドさんは33歳、大洪水の被害者の一人であり、もともと身体が不自由な方です。実は、彼は25歳のときに事故に遭い、意識は回復したものの、一人では立てず、歩くことさえできなくなりました。にもかかわらず、ムハンマドさんは、挫けることなく兄弟たちとともに再び働き始めたのですが、7月29日襲った大洪水は彼らを悲惨な状況に陥れることになったのです。
ムハンマドさんは言います。
「7月29日、私たちは、政府施設である集会所まで逃げました。そこで一週間以上滞在したのち帰宅するのですが・・・戻ってみると、家には食べ物はおろか、食べ物以外の家財道具が元の姿ではないのです。3週間も続けて9フィートにも達する水に浸っていたわけですからね。被害を受けなかった家財道具は一つもない。これまでの人生で得てきた全てのものを失ってしまったのです。ここで生活を再開するのは難しいことを思い知らされました」。
一方、農地に関しては、大洪水によって緑豊かだった土地は荒れ果て、実がよく育ったトウモロコシ畑も変わり果てた姿になりました。
ムハンマドさんは農地を所有していません。地主の指示に従って農地を耕しているのです。小作人の場合、種やスプレー、肥料といった農業に必要な資本は持てますが、収穫物から得る利益については、地主からその50%だけをもらうことになっています。このように農業で生計を立てているムハンマドさんですが、今回の大洪水は農地をめちゃくちゃにし、彼自身の農業資本をも奪い去ってしまったのです。
10月 20, 2010 北西部大洪水 被災者緊急支援 | Permalink