故郷から続く川
武装勢力とパキスタン政府軍との戦闘は、パキスタン北西辺境州で続いています。その中でも、スワート県は、紛争の中心地にあり、沢山の避難民を出しています。
ここに住む人々は、新鮮で冷たい湧き水や氷河から流れ出る水など自然の恵みを享受してきました。そして、フルーツ、牛乳や肉、その他必要な栄養を摂り、バランスのとれた食生活を送ってきました。豊富な自然の中での生活は、市街地に住む人々よりも豊かであるとすら言われるほどです。高地にあるスワートの夏は、とてもさわやかで避暑地として有名です。パキスタン各地からたくさんの家族連れが訪れ、また、心地よい気候や、壮大な氷河の景色、美しく豊かな湖や緑の渓谷を楽しむのです。
わたしたちは、このたびの緊急支援のために、スワートから南に下ったマルダン県や、スワビ県で活動を開始しました。スワート県を美しく彩っている沢山の川やその支流は、やがてマルダン県やスワビ県に流れ込み、この地域の人々の農業や飲み水に使われているのです。
マルダン県で、川沿いに暮らす国内避難民のおじいさんに話を聞きました。
「この川を見るたびに嬉しさと、そして悲しさがこみ上げてきて、とても複雑な気持ちなります」
その理由を尋ねると、
「この川は、私の故郷スワート県のカラムというところにある氷河から流れ出てきてるのです」と教えてくれました。
「私の故郷では、農業や飲み水、また水浴びも、すべてこの川の水を使っていました。この川を見て懐かしむたびに悲しくなるのです。でも、故郷から100キロ以上離れたこのマルダンの地においてさえ、私は、この水を使って生きることができます。同じ川の水を使っていることをとてもうれしくも思うのです。川の水は、スワートで見るよりは澄んでいません。それでも、私たちは同じ川の水で水浴びをします。私たちの故郷から続くこの川は、マルダン県とスワビ県の広大な土地に水を運んでいるのです」
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