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2015年1月29日 (木)

日常と非日常

 今年に入り、非人道的な事件が多発しています。

 では、現地の様子はどうなのでしょうか。

 国内避難民支援を行っているチームでは、スタッフの一人は、事業地からの帰り道、母親から頼まれた玉ねぎを毎回買っています(母親によるとそこの玉ねぎはおいしいらしいです)。別のスタッフの親戚は、最近、戦闘で負傷しました。家族がまだモスルにいるため心配だと言うスタッフがいます。親から「早く結婚しろ」、と言われることに辟易しているスタッフもいます。

 2003年から継続して行っている教育支援を担当するバグダッドのスタッフは、不安ながらも支援の手を止めることなく、一生懸命に慎重に活動を続けています。そして、イラクの活動を支えている隣国ヨルダンの女性スタッフは、夜間の外出を控えています。

 今、ここ中東で暮らすということは、日本での暮らしのような日常を過ごしながら、想像をはるかに超える危険と隣あわせで暮らすということです。

 昨年末からJENはイラクの国内避難民(IDP)を対象とした緊急支援活動を開始しています。活動は、IDPの人びとが、避難先でも暖をとり、なんとか厳しい冬を体調を壊さずに越えるための越冬支援です。たとえば、石油ストーブや石油、カーペットなど冬支度に必要な物資を手に入れる準備を進めています。次のレポートでは、よりくわしく、活動の様子をお伝えできればと願っています。

JENでは、イラク国内で発生している国内避難民を対象にした緊急支援を開始しました。この緊急支援に対し、皆様のご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

ご寄付は、こちらから受け付けております。

1月 29, 2015 事務所、スタッフ国内避難民支援緊急支援 |

2015年1月22日 (木)

はしかの予防接種キャンペーン

 イラクの保健省は、子どもたちがはしかにかからないようにするための予防接種キャンペーンを、昨年12月21日~30日にかけて行いました。キャンペーンの対象は生後9 か月~5歳までの子どもたちです。

 保健省は対象年齢の子どもをもつ市民に対して、はしかの予防接種を受けるよう啓発する大規模なキャンペーンを展開し、主要な幹線道路沿いに大きな立て看板を出したり、テレビを通じて予防接種を呼びかけました。

【道路沿いに建てられた予防接種を呼びかける立て看板】
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 JENはこれまでも、学校の教師を対象とした衛生教育の研修において、繰り返し感染症やその予防に関する知識、対応策ならびにその重要性について伝えてきています。

【JENの衛生教育の研修で使用している感染症に関する教材の一部】
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 さらに、研修を受けた教師が、感染症予防などについて書かれた小冊子を用いて生徒への衛生教育を行ってきています。

 小冊子は、感染症とは何か、感染症にかかるとどのようなことが起こるか、といったことがわかる内容になっています。
 例えば、写真にあるテキストの一部では、感染症にかかった後どのような経過をたどるのかを説明し、かかった子どもやその家族がきちんと対処しないと死に至ることもあるなど、その危険性を伝えています。

【生徒に配布されている衛生教育の小冊子の一部】
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JENでは、イラク国内で発生している国内避難民を対象にした緊急支援を開始しました。この緊急支援に対し、皆様のご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

ご寄付は、こちらから受け付けております。

1月 22, 2015 衛生教育 |

2015年1月15日 (木)

避難民として暮らす -キャンプ編-

 2014年6月以降、クルド人自治区に多くの人々が避難してきて以来ずっと、「避難民に安全な住居を提供すること」が政府そして支援団体の最優先事項でした。同年9月には数か所しかなかったキャンプが、今では23か所開設されています。

 ドホーク県北部に位置するチャミスク避難民キャンプは、11月初旬にオープンした新しいキャンプです。約25,000人の避難民が暮らすドホーク県内でもっとも規模の大きいキャンプの一つです。

【ドホーク県内のチャミスク避難民キャンプ】
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 1家族につき、1つのテントと、レンガ造りの台所・トイレ棟が割り当てられ、政府や支援団体が様々なサービスを提供しています。

 工事中の建物で暮らす避難民は優先的にキャンプへ移動することができますが、今はまだその全員を受け入れられるほどキャンプのキャパシティがないのが現状です。

 一方で、キャンプに移らず工事中の建物に残ることを選んだ人もいます。妻と5人の子ども、そして親類とともにドホーク市内の工事中の建物に暮らす男性は、キャンプに移ることを勧められましたが、移りませんでした。キャンプのほうが生活環境がいいのを承知で移らなかったのは、息子を学校に通い続けさせたかったからです。ドホーク市内にある11か所のキャンプのうち、学校があるキャンプはまだありません。

 必要最低限の支援はそろいつつあるキャンプ。これからは教育分野の拡充が、避難生活が半年以上になる人々にとって必要です。

 子どもたちは故郷に戻る日のために、そしてコミュニティの将来のために、準備しておかなくてはなりません。

【避難民の子どもたち】
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JENでは、イラク国内で発生している国内避難民を対象にした緊急支援を開始しました。この緊急支援に対し、皆様のご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

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1月 15, 2015 国内避難民支援緊急支援 |

2015年1月 8日 (木)

避難民として暮らす – キャンプの外編

 2014年6月、イスラム国と呼ばれる組織のモスル制圧に端を発したイラク危機。現在イラク全域で約200万人が国内避難民となっています。ここクルド人自治区は、治安が安定していること、イスラム国が支配する北部イラク、そしてシリアに近いことから、多くのシリア難民、国内避難民の避難場所となっています。クルド人自治区の避難民数は100万人にものぼります。

 避難民としてクルド人自治区にやってきた人たちはどこで暮らしているのでしょうか。ホテル?アパート?親戚の家?もちろんそういう人たちもいます。しかし多くの人々が、当初は工事中の建物や学校、公共施設で暮らしていました。そういった場所は自治区内に約1000か所もあると言われていました。

 新しい避難民キャンプが建設され、キャンプへの移動が行われてきたものの、今でも12万人はそういった場所での生活を余儀なくされています。

【避難場所となっているドホーク県内の工事中の建物】
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 こういった建設中の建物は、屋根があるので雨は防げますが、気温は野外と変わりません。そんな中、自分たちで作った簡易テントを張って、人々は暮らしています。

【カーペットがないので地べたに段ボールを敷き詰めている台所】
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 床はコンクリート打ちっぱなしか土です。足元からくる冷えはひどく、日が差さないので昼間でもきんとした寒さです。支援団体から受け取ったカーペットを敷いている家庭もありますが、それもなく段ボールを敷き詰めている家庭もあります。

 シャワーはもちろんありません。薪やガスコンロでお湯を沸かして、布やレンガで仕切られた一画で体を洗っています。トイレは自分たちで作ったり、支援団体が簡易トイレを設置している場所もあれば、近隣の公共施設のトイレを使ったり、外で用をたしたりしている人々もいます。

 避難民の人々は、それぞれに辛い境遇を乗り越えて、ここにたどりつきました。そして、ここでの生活も楽ではありません。それでも、毎日泣いて暮らしているわけではありません。なるべく快適に故郷での生活に近づけるよう、自分たちでトイレを作ったり、パン焼き窯を作ったり、工夫をして暮らしています。

【土でつくったタヌールと言われるパン焼き窯】
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 夜になると気温は0度近くにまで下がります。野外と同じ環境下で、寒さをしのぐには暖房器具が欠かせません。石油ストーブと石油は今、避難民の方々がもっとも必要としているアイテムです。

 政府や支援団体は、着のみ着のままで避難してきた人々に、食糧や越冬用物資などを配布しています。また、近隣に暮らすクルド人家族も、持っているブランケットや調理器具などをあげたりして支援しています。それでも、いろいろなところに散らばって生活している避難民全員に必要な物資をすべて届けるのはなかなか難しいのも事実です。

 JENは支援者の皆様からのご寄付とジャパンプラットフォームの協力を得て、石油ストーブや石油、カーペットなど冬支度に必要な物資を人々が自分で必要なものを選んで購入できるよう、引換券を配布する予定にしています。



JENでは、イラク国内で発生している国内避難民を対象にした緊急支援を開始しました。この緊急支援に対し、皆様のご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

ご寄付は、こちらから受け付けております。

1月 8, 2015 国内避難民支援緊急支援 |