アンバール県の情勢悪化に伴い
前回の支援速報でご紹介しました通り、JENは昨年末より新プロジェクトを開始しました。ところが年始早々、3県ある事業地の1つであるアンバール県の治安状況が急激に悪化しています。
各メディアで報道されている通り、12月30日、イラク治安当局が政府に対する大規模な抗議デモの鎮圧を試みました。その後、国際テロ組織アルカイーダ系の武装組織が、アンバール県の中心都市であるラマディ市と近隣都市であるファッルージャ市の一部を掌握するなど、混乱が生じています。
この状況の急劇な悪化に伴いスタッフの安全確保を第一に考え、アンバール県内での活動を一時停止し、スタッフの移動を制限することにしました。
このアンバール県というのは、バグダッドの西にある最も面積の広い県で、住民の大多数がスンニ派です。シリアやサウジアラビアとの国境があり、国境の向こう側に同じ部族の出身者や親せきが住んでいることは珍しくありません。また、アンバール県民はフセイン政権の支持者が多いとして、2003年には米軍の爆撃を多く受けました。現在は、他県と比べ、公共サービスへのアクセスが悪く、失業率も高いです。常日頃から住民の政府への不満は多々あり、長きにわたってデモ集会が実施されてきました。現在起きている同県内での抗争により死者数は増加しており、多数の避難民が発生しています。
このような事態は、2006-2008年の間におけるイラク中部および南部の状況に似ています。当時もJENはバグダッドに事務所を構えておりましたが、事業地へ移動する際に近くで爆弾が落ちる音を聞き、また幹線道路でのチェックポイントでイラク治安当局に車を止められることも少なくありませんでした。
JENが活動をする地域全てが常に安全というわけではありません。しかし、そのような場所にこそ支援を必要とする子ども達がたくさんいるのです。だからこそ、活動を継続的に実施するためにも、常日頃からセキュリティ情報の取得を心掛け、安全面で少しでも懸念がある場合は携帯電話を使用し、テキストメッセージや電話連絡で全スタッフに情報共有することを徹底しています。また、スタッフ同士でも連絡をこまかくとり、デモ集会や市場など人で混雑している場所は避けるようにしています。今後も、安全確保を第一に考え、活動を継続していきます。
JENイラクスタッフ一同、アンバール県の情勢が安定し、再び同県の学校に通う生徒たちへの教育支援を再開できる日が早く来ることを祈っています。
バグダッド事務所長
ファイーズ
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