治安悪化がもたらす混乱のなかで
イラクに関する報道では、大規模な爆破テロが注目されがちですが、市民の生活を脅かしているのは爆弾だけではありません。現在の混乱状況を利用して犯罪グループが暗躍しています。
あるバグダッド市民が誘拐された時の話です。
親戚が誘拐犯と交渉し、高額な身代金を半分以下に減額させたのですが、加えて10%の「チップ」を支払わされたとのこと。何に対するチップかといえば、殺さずに解放することへの「お礼」。実際、身代金を渡しても殺害されるケースが多いのです。また、略奪も組織的に行われており、狙われた家の家具、電化製品等はあっという間に持ち去られてしまうそうです。
殺害や拉致のターゲットとなる市民は、民兵や犯罪グループから脅迫状を受取ります。手のひらサイズの紙が1枚、ドアの隙間から差し込まれただけで、それまで一生懸命働いて築いた生活を捨てなければならないのです。より安全な地を求め、海外に逃れたり、国内で避難をするイラク市民は増える一方です。