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2004年9月23日 (木)

イタリアNGOスタッフ誘拐事件

 9月8日の朝6時過ぎ、携帯電話が鳴り、飛び起きた。一瞬で、悪いニュースだと思った。ヨルダン駐在の同僚からの「ポンテペル(「バグダッドへの掛け橋」:湾岸戦争直後からバグダッドで教育支援を行っているイタリアのNGO)の女性スタッフ2人が拉致されたそうです」との連絡だった。私も、バグダッドに滞在していた頃、NGO間の会議などで、何度か会っている2人だった。そんな2人が拉致されたとのニュースに衝撃が走った。
 
 外国人が拉致され、その国の政府に在イラク駐留の軍隊の撤退などを要求する事件は、今年の4月以降多発している。フィリピン軍の撤退を除いては、ほとんど犯行グループの要求は受け入れられていないが、拉致は増える一方だ。残念ながら殺害されるケースも増えている。多くの場合は、米英軍の請負業者やジャーナリストが移動中を襲われている。しかし、今回のイタリアNGOスタッフの拉致は、武装勢力が彼女達の事務所に白昼堂々押し入り、連れて行っているため、現地で活動している国際NGOにとってはさらに深刻な事態だ。

 イラクなど治安が悪い現場で支援活動を行う際、職員の安全確保は各団体にとって最重要課題である。外国人が攻撃の対象となっているバグダッドで活動を行うにあたり、多くの団体が、できる限り目立たないように、時には「地元の会社」を装って事業を行っている。治安情報の収集も日課であり、大使館、国際機関、地元のネットワークなどから得た情報をNGO間で共有する仕組みもできている。攻撃が頻発している場所や時間帯の行動は避け、誘拐対策として、現地スタッフを含め、毎日同じ時間に通勤しないなどの対応もとっている。

 昨年の夏以降、治安が悪化し続けるバグダッドで活動している国際NGOの数は、どんどん減っているのが現状だ。残っている数少ない団体が、こうした治安状況でも活動を続けているのは、「困難な状況でも支援を続ける」ことがイラクの人々にとって生活向上と精神的支えにつながると考えているからである。しかし、それにも限界がある。拉致発生から2週間後、2人が殺されたとの一報が入ったが、28日、一緒に拉致されていた現地スタッフとともに無事に解放された。解放後の2人の笑顔の写真を見て、私もほっと胸をなでおろしたところだ。それでも、この事件は、共に協力しながら活動しているバグダッドの人道支援の現場に非常に暗い影を落とした。いくつかの団体はバグダッドからの撤退を決めており、支援がさらに停滞することは、避けられないだろう。

9月 23, 2004 |

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