JENスタッフ逮捕?!
前々回のこのコラムで、衛星テレビのアンテナについて書いたが、アンテナの写真を撮ってもらおうとJENのバクダッド事務所のスタッフにお願いしていたら、思わぬハプニングが起きた。バクダッド事務所から、「写真を撮っていたスタッフが、警察に捕まった」と電話があったのだ。聞くと、道端で店頭の写真を撮っていたら、何をしているのか尋ねられ、その上、パトカーで連行されたらしい。いきなり「逮捕された!」と電話を受けた私はかなり焦ったが、その後、事情を話したらすぐに解放してもらえたようだ。
私がバグダッドに入った去年の夏は、ようやく警察が再編成され、交通整理や学校の警備にあたり始めたころだった。それまで、停電のため、市内の信号は機能しておらず、交差点ごとに大渋滞が起きていた。見かねた一般の人が、自分の車を置き去りにして、交通整理をしていることもあった。それが、ある時から各交差点に警官が配置され、かなりスムーズに車が流れるようになった。50度を超える気温の中、1日中交差点に立って、腕を回している警官に私は感謝したものだった。
今、イラク各地で、警察が武装勢力の攻撃対象になっている。昨年、フセイン政権崩壊後、イラク警察は占領軍により解体され、全く新しい人たちを採用したため、今の警官たちは、人々からの信頼を得ていない上に占領軍の協力者と見なされているからだ。例えば、警察がある武装勢力の一味を逮捕すると、その日の夜にはその警察が襲われてしまうのだ。そして、若い警官はその場から逃げるため、逮捕された人たちも逃げ出すことができる。バグダッドでは、こうした事件が日常的に起きている。
フセイン政権時代は、警察の力は圧倒的で、人々から敬意も払われていた。しかし今は、占領軍が設立した警察であるため、その力は軽視されており、危険をおかして警察の仕事についている警官たちにとって、こうした環境の中で任務がさらに難しいものになっている。そのような中、イラク警官が囚人に拷問をしているというニュースがあった。多くの同僚の警官たちが殺されていることへの報復との見方が強い。こうした暴力の連鎖がイラク人同士でも起きていることは、本当に残念だ。
JENのスタッフを逮捕した警官たちは、話をしたら理解のある人たちで、元の場所まで送り届けてくれ、最後には写真も撮らせてもらったという。治安回復のために、警察の存在は欠かせない。彼らが人々の信頼を得ることがその鍵であり、そのために人権を尊重する教育や技術訓練を行い、様々な経験を積むことが必要だが、まだまだ時間がかかりそうだ。