自衛隊に関する意見書
1994年の設立以来、緊急人道支援の経験を持ち、イラクについても今年4月の調査開始以来、現在もバグダッド市内で援助活動を続けるNGOとして、イラクの人道・復興支援については、イラク人がそのニーズに基づき主体的に復興することが最善であり、国際援助の専門機関である国連や国際NGOにより、彼らの自発的な発展を促す形で行われるべきであると考える。
このため、今回の日本政府による自衛隊のイラク派遣に対しては、以下の理由により反対する。
1.支援の柔軟性が低い
自衛隊は国際的な人道支援活動の専門機関ではなく、したがって現地のニーズの変化に適応して、支援の重複を避ける、様々なニーズに対応する、といった人道援助には不可欠の技能を持ち合わせていないと予測できる。
2.支援の質が低い可能性が高い
支援の専門機関ではなく、支援コーディネーションのプロフェッショナルも少ないため、「受益者に依存体質を醸成しない」、「他団体と連携して、支援活動の規準を一定に保つ」「持続可能な自立を支援する」などの配慮がなされない可能性が高い。また、これまでのイラク人との接点も限られ、コミュニケーションに長けているとは考えにくく、受益者の考えやニーズを把握できない事も予想される。
3.費用対効果が悪い
本来の支援活動には必要ない重厚な装備(特に武器)を輸送・携行するため、本来の支援活動に充てられるべき費用に対する効果が極端に悪く、日本国民の税金を有効に活用できないと思われる。すでに現地に拠点を持ち、政府や国際機関との関係を築いている我々NGOは、同規模の事業を遥かに安価な予算で実施できる。
4.日本への感情を悪化させる
イラク国内に反米感情に基づくゲリラ活動が日常化している現状において、米軍と同じく軍服にて支援活動にあたることは、米軍と同じくイラクを占領するための活動を行っているかのごとき印象を与える可能性が高い。このような状況下だからこそ、支援活動は支援活動者であることを明示できる服装・装備や姿勢で行うべきであり、日本国旗をつけた軍服を着た人々が活動することは、現地における日本に対する感情を悪化させかねない。