« 2003年10月 | トップページ | 2004年1月 »

2003年12月29日 (月)

自衛隊に関する意見書

 1994年の設立以来、緊急人道支援の経験を持ち、イラクについても今年4月の調査開始以来、現在もバグダッド市内で援助活動を続けるNGOとして、イラクの人道・復興支援については、イラク人がそのニーズに基づき主体的に復興することが最善であり、国際援助の専門機関である国連や国際NGOにより、彼らの自発的な発展を促す形で行われるべきであると考える。
 このため、今回の日本政府による自衛隊のイラク派遣に対しては、以下の理由により反対する。

1.支援の柔軟性が低い
 自衛隊は国際的な人道支援活動の専門機関ではなく、したがって現地のニーズの変化に適応して、支援の重複を避ける、様々なニーズに対応する、といった人道援助には不可欠の技能を持ち合わせていないと予測できる。

2.支援の質が低い可能性が高い
 支援の専門機関ではなく、支援コーディネーションのプロフェッショナルも少ないため、「受益者に依存体質を醸成しない」、「他団体と連携して、支援活動の規準を一定に保つ」「持続可能な自立を支援する」などの配慮がなされない可能性が高い。また、これまでのイラク人との接点も限られ、コミュニケーションに長けているとは考えにくく、受益者の考えやニーズを把握できない事も予想される。

3.費用対効果が悪い
 本来の支援活動には必要ない重厚な装備(特に武器)を輸送・携行するため、本来の支援活動に充てられるべき費用に対する効果が極端に悪く、日本国民の税金を有効に活用できないと思われる。すでに現地に拠点を持ち、政府や国際機関との関係を築いている我々NGOは、同規模の事業を遥かに安価な予算で実施できる。

4.日本への感情を悪化させる
 イラク国内に反米感情に基づくゲリラ活動が日常化している現状において、米軍と同じく軍服にて支援活動にあたることは、米軍と同じくイラクを占領するための活動を行っているかのごとき印象を与える可能性が高い。このような状況下だからこそ、支援活動は支援活動者であることを明示できる服装・装備や姿勢で行うべきであり、日本国旗をつけた軍服を着た人々が活動することは、現地における日本に対する感情を悪化させかねない。

12月 29, 2003 | | コメント (0)

2003年12月25日 (木)

きれいな教室で授業再開!

022  JENバグダッド事務所は、2003年10月よりユニセフ(国連児童基金)と協働で、バグダッド市内の南東、ザーファラニア地区にある老朽化が激しく、今回の戦争後の略奪によって損壊した小学校3校の修復事業を行っていました。12月18日までに全て作業が完了し、イラク教育省とユニセフの方から承認をいただき、正式に引渡しを行いました。

 JENの現地エンジニアスタッフが毎日確認に行き、治安状況が悪化する中も現地業者が毎日作業を行いました。配水管が破損し、蛇口もなくなっていた水飲み場で水が飲めるようになり、使えなかったトイレは建物ごと新しくなり、壁も床もきれい張り替えられ、暗くて電気がつかなかった教室で、新しい配線と新しい蛍光灯が取り付けられました。

 修復期間中、他の学校で授業を受けていた子どもたちが、12月20日から新しくなった校舎での授業を再開しました。生徒たちからは、「きれいになった教室で授業が受けられて嬉しい!」「もっと美しくにするために、絵を張りたい!」など喜びのコメントが届いています。また、21年間教師をされている先生からは、「21年間で、こんなにきれいな学校を見たことがない。長年戦争で苦しんだ私たちにとって、非常に嬉しいことです。」とJENへの感謝のコメントもいただきました。

 修復された学校で、子どもたちが新しいイラクの将来に希望を持ち、勉強に励んでくれることを願っています。JENとしては、一人でも多くの子どもたちの教育環境が整うように、今後も学校修復事業を続けていきます。

12月 25, 2003 学校建設・修復 | | コメント (0)

2003年12月18日 (木)

爆弾が投下された小学校

011  ジャパン・プラットフォームの協力により、新たに10校の小学校の応急修復、特に学校内の水と衛生設備の修復を中心とした事業を実施することが決定しました。

 10校の選定にあたっては、バグダッド市内でも、貧しく、学校の数の少ない地域、かつ修復があまり進んでない地域を選定し、20校以上の学校を訪問した結果、バグダッド市の南東部ザーファラニア地区の5校、南部ドーラ地区の5校の小学校を修復することになりました。この10校の中には、イラン・イラク戦争時に爆弾が投下され、多くの生徒が犠牲になったことで有名になってしまった小学校や、今回の戦争の間にイラク兵が立てこもっていたために、爆弾が投下され、天井に大きな穴がいくつも開いている小学校などがあります。また、1,500人近い生徒がいるにもかかわらず、水が出る蛇口が学校中で1つしかない学校やトイレが全く使えない状態の学校もあり、不衛生な環境の中、子どもたちが勉強している状況です。

 この事業によってバグダッド市内の小学生約9,000人と教師約250人が安心して学校へ通えるようになります。また、修復作業のために現地の人々を雇用することにより、失業率の高さが問題になっている現地で、人々が職に就く機会を少しでも多くして地域社会にも貢献したいと思っています。現在、バグダッド事務所では修復事業を行う地元業者の選定に向けて、急ピッチで入札の準備を行っています。

12月 18, 2003 学校建設・修復 | | コメント (0)

2003年12月11日 (木)

赤堀久美子が無事帰国

akabori   今年8月からバグダッドで活動にあたっていた赤堀久美子が、12月10日に無事帰国しました。12月5日にバグダッドからヨルダンのアンマンに移動し、治安状況が悪化する中、予定を10日早めての帰国となりました。

 バグダッド滞在中の約4ヶ月間、小学校の修復事業にあたり、ユニセフや教育省との調整、業者の選定や価格交渉、修復中の学校のモニタリングなど、バグダッド事務所長の補佐として活動を行っていました。彼女がバグダッド入りした8月には50度を超えていた気温ですが、今は15度前後になり、寒くて暖房が必要なくいらいだということです。それでもバグダッド市内では、電気が朝2時間、夜2時間しか通っておらず、一般市民の生活は依然として不安定な状態が続いています。

 厳しい治安状況が続く中でもJENの学校修復は順調に進んでおり、3校の修復は今週中に終了予定です。その後、教育省への引渡しを行い、子どもたちが授業を再開します。赤堀は予定より早い帰国となり、3校の修復終了を見届け、子どもたちが学校に戻る姿を見られなかったのが非常に残念だということですが、JENは今後もシリル事務所長と現地スタッフが活動を続けていきます。

12月 11, 2003 学校建設・修復 | | コメント (0)

2003年12月 1日 (月)

日本人外交官と大使館運転手の殺害に関して

 この度、外務省のお二人と在イラク日本大使館運転手の訃報に接し、衷心から哀悼の意を表し、ご遺族のみなさまには心からお悔やみ申し上げます。

 JENは、本年4月から調査を開始し、8月よりバグダッドを拠点として事業を実施しており、亡くなられた井ノ上書記官とも交流がございました。特に奥参事官には、ご自身ご多忙な毎日にもかかわらず、親身になって治安関連情報を共有していただき、アドバイスを頂いておりました。JENが同地で行っている事業は、奥参事官もその必要性を強調されていた学校修復であり、私たちは力をあわせてイラクの復興に尽くしたいと考えていた矢先の出来事でした。JENはこれからも、奥参事官のご遺志も継いで、イラクの復興のためにできる限りの支援をしてゆく所存です。お二人のご冥福をお祈り申し上げます。

 JENイラク駐在スタッフは、国際スタッフ・現地スタッフとも全員無事です。ただし、彼らの安全のために所在等は明らかに出来ません。小学校修復などの事業は継続しておりますが、国際スタッフは隣国ヨルダンのアンマンに退避して、同地からの業務遂行になります。

12月 1, 2003 政治、経済、治安 | | コメント (0)