2009年7月 2日 (木)

教員研修の必要性

 イラクでは、今、何千人という先生たちが研修を必要としています。経験年数によって熟練度に差があるので、常に研修を受け、スキルを磨くことが求められているのです。

 特に、教育史の研修を通して、ここ数十年の教育分野の推移を学ぶことが重要だと考えられています。例えば、「非識字」は、「新しい知識分野にアクセスする能力の欠如」として理解されることなどです。2003年以降、イラク教育省は年次計画の中で教員研修の重要性を挙げ、努力を続けてきました。しかし、現実には大変限られたものでした。

 現地では、教育省が国際機関とともにイラクのすべての教員に対する研修を行い、学校での教員研修に関して評価までもすべてが教育省の計画に含まれるべきである、という声があります。また、教員を日本に派遣し研修を受けることや、研修やモニタリングのスペシャリストを日本からイラクに派遣することで、イラクの教育分野を支援することを希望する声もあります。

 教育とは常に発展し続けている分野です。JENは、現在、教育環境の改善に力を入れています。このプロジェクトによって、子どもたちの教育へのアクセスが広がるだけではなく、いずれ、この国を担うようになる人びとへのより豊かな教養を得るという育成を行っているのです。と同時に、日々の問題である、人びとの健康状態の改善を願い、大きな視野をもって活動を続けています。

7月 2, 2009 生活、習慣、風土 |

2009年6月18日 (木)

ヨルダン国王在位10周年

090618_zimbio  ヨルダン政府は、アブダラ国王の在位10周年を記念して、彼の誕生日である6月9日を臨時の国民の休日としました。

 この日、アンマン市内にある国際スタジアムでは、政府主催の記念イベントが行われました。この式典に参加したJENスタッフによると、イベントには国王のご家族、王妃と2人のご子息が出席され、会場はすごい熱気と歓迎のムードに覆われていたそうです。

 ヨルダンの王家は、国民から絶対の信頼と尊敬を得ています。特に、クウェート出身のパレスチナ人であるラニア王妃の人気は、アブダラ国王の大きな支えとなっていると言われています。

 ラニア王妃は、人権や女性の自立促進などに大きな関心を寄せていらっしゃる方で、ご自身でもパレスチナ難民女性の経済的自立をめざすNGOや、ヨルダン国内の女性企業家をマイクロファイナンスによって支援する事業などを立ち上げられました。また、頻繁に国内外の様々な支援団体などを訪問し、特に若者への人権教育などの必要性を訴えていらっしゃいます。090618_zimbio_2

 9日のアンマンでは、花火がたくさん打ち上げられ、また、ヨルダン国旗を振りながら車が走りまわり、大変賑やかな夜となりました。

6月 18, 2009 |

2009年6月 4日 (木)

世代のギャップ、文化のギャップ

 イラク、ヨルダンのみならず、アラブ世界では一般に、「家族」の名誉、威信は社会生活で最も大切な価値観とされています。イラク人スタッフによると、たくさんの手続きを踏んで難民として認定され、西洋のリベラルな国に移住できた家族も、いざ住んでみると彼らの心労は大変なものであるそうです。

 イラクの人々の多くは、敬虔なイスラム教徒です。家族の結びつきは何にも増して大切にされ、たとえば1日5回のお祈りを欠かさない、飲酒をしないなど、イスラム教の教えにのっとって生活をします。

 このような価値観を持った人々が西洋世界に移住すると(もちろん全てのイラクの人々がそうではありませんが)、学校やショッピングセンターにお祈りの設備のない環境で生活します。金曜日(イスラム教では金曜日は休日)の礼拝も、出勤・登校を余儀なくされることで、イスラム教の生活習慣を保つことが難しくなることがあります。

 このようにイラクで大切にされているアラブ文化を守ろうとする両親と、新しい環境で学校に通い滞在先に友人を持つ子どもの世代間に、大きな精神的ギャップができてしまうことが、しばしば社会問題になるそうです。

6月 4, 2009 |

2009年5月21日 (木)

バクダットの衛生事情

090521__low  先日、イラクにて保健省、教育省、中央統計・情報技術局、そしてクルド地域の保健省、教育省による「学校保健調査」が行われました。

 水質調査などの結果、8州に属する150校のうち48%の学校が衛生環境に問題があり、子どもたちの教育環境として適切ではないとわかりました。さらに、これら対象校のうち65%の学校では、水を公共水道から引いているにも関わらず、63%の学校でその水質を調査する仕組みがないことが明らかになりました。

 この調査から、教育機関(学校)の水・衛生設備の修復、そして衛生教育のニーズがまだまだ高いことが確認できました。実際、2007年に保健省によってこの分野への取り組みが見直されて以来、より多くの国際機関やNGOが関わるようになっています。

 ジェンは、支援者の皆様そして外務省のご協力を得て、バグダッド市内の小中学校にて、主に水周りの設備修復の支援を行っています。支援対象の学校17校のうち、6校では修復作業がほぼ終わりました。

今後、持続的に使用できるよう、ジェンは修復後に保証期間を設けていますが、「作って終わり」ではなく、引き続きメンテナンスのお手伝いも行ってゆきます。

5月 21, 2009 |

2009年4月23日 (木)

バグダッド事務所の新スタッフ

 はじめまして。
 私はバグダッド事務所のプログラム・オフィサーです。1956年生まれのイラク人で、1980年より教育分野の仕事をしています。

 私の夢は、イラクに平和が訪れ、様々な分野の復興にイラクの皆で力を合わせて取り組めるようになることです。ご存知のとおり、私の国は1980年から2003年にわたり3つの戦争を経験をしました。1991年からは経済制裁が続き、2003年以降においても様々な問題に苦しんできました。戦争は、教育・健康・環境・経済など生活の全分野の発展を妨げます。日本の皆さんも、戦争がどんなに悪い影響を与えるかについて、よくご存じのことと思います。

 この状況において、私は人々の相互理解を進めることが重要だと思っています。そのために、個々人が権利と責務を理解し、国の復興に向けて、故郷への愛情を持つこと。そして、憎しみや暴力、仕返しなどでなく、公共の利益、愛、平和、忍耐をもって何事も選択されることが大切だと思います。

 このような平和教育には時間がかかります。そして、今こそ始めるべきだと思っています。それも、新しい考え方に対して寛容であり、家族や地域社会の未来を担う子どもたち(幼稚園や学校)から始めるべきだと思っています。
 

 では、どうやって実現していけばいいのでしょうか。国の役割は何でしょうか。また、NGOはどのような貢献ができるでしょう。イラクは、他国の、特に日本の経験から学ぶことができると思います。

4月 23, 2009 素顔のバグダッド |

2009年4月 9日 (木)

17校の修復開始

090407_3_low  2月16日よりバグダッド市内17校の学校修復事業を開始いたしました。

 3月末までに、ジェンのエンジニアが修復の対象となっている学校の調査を行い、生徒の安全面や健康面から必要な修復の詳細が、見積仕様書に組み込まれました。また、学校の先生方とも話し合いを繰り返し、先生の視点で必要と思われる修復箇所も仕様書に加えました。

 完成したプランを教育局に提出して承認を受けます。地元の建設業者数社に仕様書を送りました。2週間後、ジェンの事務所にて入札を行い、各校の修復を担当する業者を決定、ようやく契約を結ぶに至りました。現在すでに、6校の修復が始まり、順調に進んでいます。

 今回対象となる学校も施設の損傷がひどく、トイレにいたっては、全く機能していないところもあるようです。17校の子どもたちが安全で清潔な環境で学習できるよう、ジェンは引き続き支援活動を行っていきます。

4月 9, 2009 衛生教育 |

2009年3月26日 (木)

「家族」助け合い制度

 ヨルダンには、冠婚葬祭の時に家族単位で助け合うための制度があります。ここで言う「家族」というのは、日本のような核家族的な意味合いではなく、同じ名字を持つ人すべて(!)を指します。

 全ての家族は○○基金(私の場合なら日本全国の田中さんが登録する「田中基金」)を持っており、その基金はヨルダン内務省に登録されています。同じ苗字を持つ者は、みなこの基金のメンバーに登録します。

 基金の利用申請は、必要経費や、核家族単位では負担できないような「高額なお買い物」の時にできます。各支部代表者による協議のもと物やサービスが購入され、これを全国の「家族」の総人数で割り勘にし、各家庭ごとに人数分を支払います。

 例えば・・・結婚式の会場貸切が高額なために、家族で3階建ての結婚式会場を買い取ってしまうケース。また、民間企業に委託する葬儀サービスが高額なために、名前入りの霊柩車を家族で購入し、葬儀の際にこれを使うケース。結婚予定のある家族のメンバーが若年のために、経済的支援が必要なケースなどなど。

 アラブの人たちの家族を大切にする文化が、行政機関を介した制度として成り立っているのには驚かされます。アラブ的大家族ならではの助け合い制度と言えます。

3月 26, 2009 生活、習慣、風土 |

2009年3月12日 (木)

バグダッド市内の国内避難民の生活状況

 世界移住機関(IOM)および国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の調査により、バクダットにいる25万人にものぼる国内避難民の衝撃的な生活が明らかになりました。

 故郷に帰還した人びとの多くは、自宅へ帰ってみると見ず知らずの人に家を占拠されてしまった等の予期せぬ現実に直面しているそうです。そのために、バクダットでの避難生活を余儀なくされ、多くの人は市内にあるフセイン元大統領の所有物であった建物や倉庫で生活しています。

 これらの建物は、イラク戦争の際に連合国軍に爆撃の対象とされました。コンクリートの天井は、ところどころ剥がれ落ち、外壁は完全になくなり雨風もまともにしのげないような状態です。もちろん水道、電気、ガス、下水などはありません。ゴミ処理もありません。避難民の方々はゴミや腐りかけた生ゴミ、汚物などの散乱する中で生活を送っています。

 イラク政府は、国内避難民に燃料や食用油を50リットルずつ配給し始めました。まだまだ、生活は改善されません。さらに今年1月、政府は、廃墟となった行政機関の建物で生活している避難民に対して、数か月の引っ越し期間を設け、退去令を出しました。避難民の新しい住居を建設する計画は、昨今の石油価格の暴落による財政難の影響で、2010年まで延期せざるを得なくなりました。結果、避難民に次の安定した生活場所がありません。今も軍や警察による強制退去におびえながら、壊れている建物の中で生活しているそうです。
 
 JENは、現在行っている学校の施設修復を通じて、避難民を受け入れる地域環境を整えるとともに、より生活の一助となるような支援活動にも今後取り組んでいきたいと考えています。

3月 12, 2009 素顔のバグダッド |

2009年2月26日 (木)

イラクの結婚事情

 今回は、イラク人の結婚観に迫ってみたいと思います。

 イラクのイスラム社会では、結婚は両親が決めた相手とするものであり、恋愛結婚はなかなか成立しません。なぜなら、結婚は家と家との「契約」と考えられているからです。そのため、家族の背景が明確である従兄同士の結婚がとても多いそうです。

 男性が女性の両親にお金を渡すという、日本の結納金にあたる「サダク」は日本円で70万円にも100万円にものぼります。平均月収が5~10万円といわれるイラクの人々にとって、とても大きな額のお金です。

 男性側は家族の威信をかけて高額のサダクを提示し、またそれの金額の高さは女性側の誇りにもつながるそうです。驚くべきことに、結納の際は、結納金と同時に万が一の離婚の時に支払う、いわゆる「手切れ金」の額がセットで明記されます。

 サダクが高すぎるので、男性の両親がこれを支払うことが多いといいます。よって、息子の結婚相手にもリクエストが多いそうです。そして、サダクよりも高額の手切れ金を提示することで、女性の離婚の心配を減らし保護する役割があります。

 2003年までは、万が一の離婚後、たとえ男性が購入した家であっても、離婚後2年間は、女性の所有になる、すなわちどのような理由においても男性が出ていくことが法律で定められていました。また、夫婦間に子どもがいる場合、子どもが20歳になるまでの養育費は、例外なく男性が負担することが法により定められていたそうです。

 イスラムの結婚というと、平等に愛することを条件に妻を4人までめとることができる一夫多妻制ばかりが有名で、その他の側面は伝えられないことが多いように思います。このように、女性が保護されている点を、皆さんにも知っていただければ、と思います。

2月 26, 2009 生活、習慣、風土 |

2009年2月12日 (木)

イラクの復興を願い1票!

090212__low  2009年1月30~31日、イラク18州のうち14州にて州議会選挙が行われました。投票率は51%とマリキ首相の予想(70~80%)を大幅に下回るものにはなりましたが、大きな混乱もなく無事に終了しました。イラク国外にいる難民や国内避難民(IDP)の選挙権が認められなかったことや、投票権を持つ全人口が完全に登録されていなかった地域があったりなど、投票率の低さの原因が伝えられています。

 前回の2005年の初選挙は、連合軍主導の選挙でした。当時、他国のイラクへの介入を「不当」としてスンニ派は投票をボイコットしました。しかし、その後の3年半に起こった派閥の不均衡による治安悪化や政権内での影響力低下を受けて、その大多数が今回の選挙に参加しました。

 老いたイラク人のおばあちゃんが“イラクの未来を自分の手で作る”ために、遠くから徒歩で投票所へと向かうニュースなどを見たことがあります。その時、やはりこの選挙はイラクの人々にとって大切な、大切な復興のプロセスであるのだなあと感じました。090212__low_2

 選挙結果の発表は最短でも1ヶ月後。当選する候補者も、そうでない者も選挙の結果を受け止め、国民のための政治がおこなわれることを切に願います。

(写真:投票を呼びかける新聞広告)

2月 12, 2009 素顔のバグダッド |