『ご飯ができたら起こすね』――空腹の夜を越えるために――アフガニスタン帰還民への食糧支援
食料危機に直面するアフガニスタン帰還民
「毎晩、私は料理をするふりをしながら、『ご飯ができたら起こすから、寝ていなさい』と、子どもに嘘をついて寝かしつけていました。空腹のまま眠る子どもを見るのは、ほんとうに辛かったです」。パキスタンからの帰還を余儀なくされたアフガニスタン人の母親が、胸の内を語ってくれました。
2023年9月、パキスタン政府が「不法滞在外国人帰還計画」を発出して以降、2025年までに、100万人以上のアフガニスタンの人びとが、準備のないまま帰国を余儀なくされています。多くの家族はパキスタンで長年生活を築いていましたが、家財のほとんどを置き去りにし所持金もないまま国境を越えており、深刻な人道危機が発生しています。
ジェンは今夏、アフガニスタン東部の国境地帯で、こうした「帰還民」を対象に食糧や衛生物資の配布を行いました。
緊急支援の食糧を受け取った女性(8月13日、ナンガルハル県べスード地区で)
深刻化する人道危機・ジェンが実施している食糧支援
UNHCRによると、2025年5月までにパキスタンからアフガニスタンに100万人以上が帰還。さらに年末までに60万人が移動すると見込まれています。イランからも約100万人がアフガニスタンへ帰国しており、アフガニスタン国内の経済・社会状況をさらに逼迫させ、帰還民の多くが貧困や飢餓などの人道的危機に直面しています。
ジェンは2025年7月〜8月、パキスタンと国境を接するナンガルハル県の5地区で、食糧支援を行いました。帰還民の中でも女性が世帯主だったり、家族に障がいがあったりする、特に困難な状況に置かれた1,024世帯を対象としました。米や豆、油など2ヶ月分の食糧を配布し、現地では感染症の流行が著しいことから、石鹸を使った手洗いや浄水法に関する研修も行いました。
女性を対象にした衛生啓発研修(8月13日、ナンガルハル県べスード地区で)
嘘を言って子どもたちを寝かしつけていました
「パキスタンでの生活は貧しく厳しいものでしたが、家族で支え合い、なんとかやっていけていました。今のように食べ物に困る日々が続くことはありませんでした」
2025年3月、4人の子どもとともにアフガニスタン・ナンガルハル県ベスード地区へ帰還したアジザさんは、パキスタン・パンジャーブ州での生活をこう振り返ります。
アジザさんたち一家は約15年前、極度の貧困や治安の悪化を避け、アフガニスタンを離れ、パキスタンで生活を築いてきました。がんで夫を亡くしたアジザさんは助産師として働き、子どもたちも路上で豆を売り、なんとか日々、食べていくことができました。
しかし、強制帰還ですべてが崩れました。彼女は、パキスタン政府が発行するAfghan Citizen Cardを保持しており、厳密には「不法滞在(Undocumented)」ではありませんでしたが、それでも家財道具を残し、支援も仕事もないまま帰還を余儀なくされました。アフガニスタンではほとんど仕事がなく、食べ物のない日々が続き、子どもたちは弱り、必要な栄養をとれない状態に陥りました。
「毎晩、私は料理をしているふりをして、『ご飯ができたら起こすから、寝ていなさい』と嘘を言って、子どもたちを寝かしつけました。私は他人の家で洗濯や皿洗い、料理などなんでもして、食べ物や少しのお金を得ていますが、それでも毎日の生活には到底足りません」
アジザさんのもとには8月、ジェンの食糧支援が届き、安定を取り戻し始めました。食糧があるうちに、一家は豆売りの屋台を購入し、12月現在、ナンガルハル県で小さな商売を始めています。
帰還民の方々の暮らしは厳しいですが、ジェンは今後もこうした人びとの暮らしの安定を支える活動を継続します。
また、帰還民の方々の状況を、引き続きお伝えしていきます。
アジザさん(右から3人目)に話を聞くジェンスタッフ(左、11月30日撮影)
※本事業は、ジャパン・プラットフォームからの助成金や皆さまからのジェンへの寄付金により実施しています。
12月 4, 2025 | Permalink




