ムッラーへの衛生教育
JENは現在、学校に通う子どもたちを対象に衛生教育を実施することで、その家族や周辺コミュニティ全体への衛生知識・習慣の波及を目指しています。実際に昨年の活動では、子どもからその親へ衛生知識が伝わっている状況を確認できました。今年も同様の波及効果をねらい、学校の子どもたちを対象に活動を継続しています。
しかし一方で、JENが活動している地域には就学年齢の子どもがいない家庭や、様々な事情から就学年齢の子どもを学校に送ることができない家庭もあります。
そこでJENは今年、より多くの人に衛生知識・習慣を広めるため、新たな試みとしてムッラー(イスラム教の聖職者)も対象にして衛生教育を実施することにしました。
イスラム教では、金曜日は大切な集団礼拝の日です。アフガニスタンでは信仰が厚く、学校とかかわりが無い人でも、ほとんどの人が礼拝のためにモスクに集まってきます。同国のモスクでの礼拝は男性しか許されていません。ムッラーはこの集団礼拝の前に説教をするのですが、衛生についての説教をしてもらうことで今でも家長としての権限がある男性から女性と子どもへ、そしてコミュニティ全体へ衛生知識と習慣を広めてもらおうというのがJENのねらいです。
7月下旬~8月上旬にかけて、348名のムッラーを対象に3日間の衛生教育研修を実施しました。
清潔でいることはイスラム教の教えでもあります。そのためか、ムッラーたちは衛生教育に高い関心をもち、研修中は講師に積極的に質問するなど活発なやりとりが見られました。
「これまで、ムッラーを対象に研修を行ってくれる政府機関やNGOはありませんでした。私たちは昔ながらの手洗いの仕方は知っていましたが、研修により効果的な手洗いの方法や、経口補水塩の作り方などを知ることができました。この研修を受けることで、自分たちの衛生知識を強化することができたと思います(シンワリ地区、54歳)」
「私の村の人びとは衛生知識が大変乏しく、下痢や皮膚病に頻繁に悩まされています。しかし、私たちムッラーの衛生知識も乏しい為、これまで何もできずにいました。この研修で、私たちの衛生知識は大きく改善されました。私はここで学んだことを信者へしっかり伝え、信者からその家族へ、ずっと健康で過ごせるよう伝えていってもらおうと思います。JENの現地スタッフ・国際スタッフの多大な努力に感謝します。(バグラム地区、38歳)」