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2004年4月26日 (月)

雪かきと支援の関係(駐在員椎名カブール日記)

1  先日、カブールに30cmほど雪が積もり、一面の雪景色になった。カブールから見える山々もすっぽり雪に覆われ、神々しく輝いている。
 綺麗なものだなあと眺めているのもつかの間、現地スタッフから「雪かき」の話が持ち上がった。スタッフが駐在している建物の屋根はアフガンでは伝統的な、泥でカバーしているタイプで、雪かきをしないと後で雨漏りすると言う。そこでスタッフが一言。「シイナ、雪かき用のスコップを買わないと。」私は内心またかと思う。さて、議論開始。 
「スコップが事務所にあるじゃないか。」「今あるスコップじゃあ、屋根に傷がついてしまう。先端が木で出来た、雪かき用が必要だ。」「今あるものじゃあ、何とかならないの?」スタッフは困った顔をして首を振る。買っても5ドルするかしないかであろうか。でも、今日以外使う機会は殆どないだろう。お金がもったいない。何とかならないか?私は台所をうろうろする。ほら、見つけた。
私がスタッフに高々と見せたのは、プラスチック製のお盆。これなら屋根に傷がつかないし、軽い。しかも一度にたくさん雪かきが出来る。スタッフはあきれたようなそぶりを見せ、大げさに腰を曲げ、首を振る。「それじゃあ、腰が痛くて大変だ。スコップを買ってくれよ。」やれやれ。私はスタッフが制止するのを無視して屋根に上がる。スタッフもいやいや屋根に上がった。私がお盆を使って雪かきを始めると、スタッフものろのろとお盆を使い始めた。
背中を丸めて雪かきをしながら、私の頭に東京本部事務局でアフガン担当デスクをしていた時の事がよみがえる。支援者の方々にご理解を頂き、500円のご寄付を頂くのがいかに大変か。昨今世間の関心が薄くなったアフガン支援のため、東京本部事務局の同僚が深夜まで働き、どんなに大変な思いをして活動資金を集めてくれているか。お金を使うのは簡単だ。たかが500円という人もいるだろう。でも、それは間違いだ。NGO活動での資金の重みを、私は東京で学ばせていただいた。出来れば事業に1円でも多く使いたい。でないと私は支援者の方々や同僚に顔向けが出来ない。
 30分ほど作業をすると、雪かきも終わりが見えてきた。雪かきが楽しくなりはじめ、私は下にいたスタッフにカメラを持ってくるように頼む。記念写真を撮る頃には嫌がっていたスタッフの顔にも笑顔が浮かんでいる。私はこの雪かきが支援活動と似ていると気がつく。
 国際NGOが村にくると、村人達の多くは生活がとても苦しい事を切々と訴える。支援内容を説明すると「それでは全然足りない」という村人もいる。話の端々に国際NGOはお金を持っているものだという彼らの意識が見え隠れすることがある。それは事務所で働く現地スタッフも同じ。「お金がない」と言って隣人の住宅再建への協力を渋る村人に、お金のかからない方法を提案するだけでなく、ジェンがやって見せて初めて村人は動いてくれることがある。言うだけでは駄目。自分でやって見せないと。先ずはジェン事務所内部から。
 残りの雪かきをスタッフに任せ、デスクに戻ってくると自分の手が細かく震えている。腰が重い。お茶を飲んで一息入れイスに座ったとき、私はふと、スタッフが最後に笑っていたのは雪かきや写真が楽しかったのではなくて、私に雪かきをまんまと手伝わせることが出来たからではないかと思い当たった。道理でスタッフがニコニコしていた筈だ。
 現地の人々は、いつも私の考えの一つ上をいっているのかも。私はまだ甘い。

4月 26, 2004 事務所・スタッフ |