感謝の重み(駐在員椎名カブール日記)
「ありがたいことですなぁ。」
柴田さんは人道支援活動家のお坊さんである。68歳にはとても見えない活動的な方で、今回ジェンに文房具と医薬品のご寄付を下さり、カブールにいらっしゃって実際に現場をご覧になった。長く医療機器メーカーにご勤務された後、ある医療支援NGOの立ち上げにたずさわられ、修行を積まれた後、現在は長野県更埴市でお坊さんをされながら市の国際交流協会で働いていらっしゃる。柴田さんはアメリカやユーゴスラヴィアに赴任されていたことがおありで、誰とでも物怖じせずにお話されるのはそのせいだろうか。ジェンが支援をさせていただいたカブールの学校を見学され、持ってこられた文房具を学校にご寄付された後、生徒達に向かって応援のお声をかけられたり、チャリカに唯一ある病院を訪れた後、さらに奥地にあるクリニックをお訪ねになるなど、自分の目と足で支援をされる方だと私は思った。柴田さんの口癖がこの「ありがたいことですなぁ。」だった。
130ダース以上の新品の鉛筆や医療用の手袋などの支援物資は、更埴市で協会や病院の方々のご協力で2週間ほどで集められたものだという。柴田さんは地方公共団体や企業が出来る支援活動に関して深い知識とご経験をお持ちでいらっしゃり、お医者さんにボランティア活動をされている方が多いことなどを私に教えてくださった。会社社長を努められたこともある、いわゆる“偉い方”なのだとだけ思っていた私は、今回のご滞在中その気さくで柔らかい物腰や話し方についうっかり友達と話しているような言葉づかいになってしまうことも度々だった。柴田さんは丸い頭を撫でながらおっしゃる。「今回の活動では地元の方々が支援物資をこんなに集めてくださり、地元の新聞も取り上げてくださるという。ありがたいことですなぁ。」この「・・・ですなぁ。」のおっしゃり方にお人柄がとても出ている感じがする。何か胸にゆっくり降り積もるような言葉なのである。
柴田さんのお話を伺ったり、新聞記事を読ませて頂いて一貫して感じるのは、日本のNGOとその支援活動への大きな期待と、それを可能にするNGO活動への支援体制確立に向ける情熱である。柴田さんはそれを地域の人々のネットワークや企業からの協力という多角的なアプローチと「ありがたいですなぁ。」という気持ちで結び付けて達成しようとされている。今回私は柴田さんに同行させていただいたことで、日本での地元に根ざした支援活動に関する新しい可能性を見せていただくことが出来た。柴田さんはこれからさらに支援活動を広げてゆかれるということで、ジェンも柴田さんの活動に負けないように頑張らねばと思わせていただいた。
柴田さんを空港でお見送りした後、帰りの車の中で自然と思い出されるのは、やはりあの「ありがたいことですなぁ。」という柴田さんの言葉なのであった。ジェンを支援してくださっている皆さんへの私の感謝の気持ちが、言葉にあれほどの重みや深さをあらわせることが出来るだろうか。私は本当に感謝して日々活動をさせていただいているか。私もいつか、支援させていただいた方々にあのような言葉をもっと言ってもらえる様になれるだろうか。
「ありがたいことですなぁ。」
そうなることができたら、柴田さん、 それは本当にありがたいことですね。
2月 20, 2003 | Permalink
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