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2002年12月11日 (水)

外国人の私とカブール(駐在員椎名カブール日記)

7  チキンストリートは外国人が買い物に来ることの多いショッピング通りである。私がこの通りで買い物をしていると、まだ10代前半らしい子供たちが3人店に入ってきた。この通りは洋食の食材が手に入るけれど、値段が現地の食材よりとても高いので、私はいつも自分の財布と相談して緊張しながら買い物をする。いくつか店を回って一番安い店を確かめて買うことも多い。と、そんな私を尻目に3人は50新アフガニー(約1ドル)の札束を胸ポケットから出して、派手に洋菓子や飲み物を買い漁り始めた。

  1日2ドルで働く肉体労働者がごまんといるこの国で、その光景は私にとって異様に映った。「お金の本当の価値がわかっているのか」と正直言って私は少し腹が立ったが、ふと思い当たることがあって考えてしまった。私のような外国人がアフガンで買い物をする時も気をつけなければいけないな、と思ったのだ。私がお金持ちの子どもに腹が立ったように、多くのアフガン人も、外国人が資金力に物を言わせて買い物をするのを見ていい気がするわけがないだろう。カブールでは町が日増しに活気づき、新しいレストランも出来て言ってみれば外国人にとって少しずつ住みやすい都市になってきたけれど、本当のところアフガン人にとって住みにくい都市になってはいないだろうか。高級車を乗り回し、現地の人にとってとても高級なレストランで食事している“アフガン支援に来ている”外国人は、現地庶民に目にどう映っているのだろう。あの3人の子供達はお年玉で買い物に来ただけの、一時的なものかもしれない。でも私達外国人は...。

 アフガン支援のために来ている外国人として言わせてもらえば、ここでの生活は決して楽ではないし、たまにはこちらでは高級でも味やサービスはヨーロッパや本場の味とは比べるまでもないレストランで食事するぐらい、許して欲しいとも思う。私の給料も、日本の企業で働く友人達とは比べるべくもないし。支援をするには現地の方と同じ目線で生活するのが良いと思う反面、治安確保のために事務所や車にお金をかけざるを得ないという事情もある。もちろん、アフガン人の中にも外国人がアフガニスタンで生活することがいかに大変か、理解してくれる人も多い。けれど、一般のアフガン人の方が頭で理解できても心安らかでない気持ちはわかる気がする。

  これからクリスマスやお正月にかけて、私達外国人はパーティなどで外出することが多くなるだろう。私もカブールで年を越す事になった。国連のセキュリティー・オフィサーによると、最近アフガニスタンにタリバンやアルカイダの勢力が再結集しているということだし、外国人批判・排斥の動きがこれに連動しないとも言い切れない。現に最近国際NGOの職員が武装グループに襲われるという事件が幾つも起きている。レストランなどの外国人が集まる所はテロの格好の標的だし、私が反外国人テロリストなら絶対狙う。

 つい忘れがちだが、私はまだ戦火のくすぶる国で生活しているのだ。子供達が抱えた札束を見ながら、私は自分の行動が現地の方からどう見られているか、どう見られるかに注意してこの年末を過ごそうと思った。

 今年も残りわずか。

12月 11, 2002 事務所・スタッフ |

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