冬が来た!(駐在員椎名カブール日記)
それはまだ強いカブールの日差しの中の一陣の風に始まり、はるかに見える高い山々の雪化粧と深夜の足の冷たさを通してついに町全体を支配した。時折降る雨と空を被う灰色の雲。
最近のカブールでは停電や電圧低下がはげしく、寒さの中部屋にある電気ストーブは赤く温まらない。1日の大きな楽しみである温水シャワーも突然の停電で暗闇の中の冷水に変わってしまう。カブール事務所兼住居では井戸から電動ポンプで水をくみ上げて使っている為、停電になると水も出ない。トイレも然り。私達は洞窟探検で使うようなヘッドランプを持ち、停電になるとそれを使って仕事をしている。これが冬のほんの始まりにすぎず、これから零下10度以下まで気温は下がるというのだから参る。まさに越冬支援が必要なカブール事務所。皆さんの愛の手を!
・・・と他人に頼ってばかりもいられないので今日から現地のストーブ、“ブハリ”を使い始めた。構造は極めてシンプル。小型のドラム缶に毛が生えたようなものに排気用のパイプを付け、部屋の排気穴に接続したら設置完了。幾つかタイプがあるらしいがジェンが使っているのはポピュラーな薪を使うもの。一台12ドル也。最初は埃やすすを掃除したり、煙が部屋に充満したりして大変だったが、一度慣れてしまうとなかなか良い。においが気になる人もいるけれど、少なくとも私には香ばしい香りである。これからのブハリの活躍に期待したい。
しかしここで(私にとって)新たな問題が発生した。イスラム教国の習慣行事、“ラマダン”の始まりである。朝の4時ごろから夕方の5時半頃まで、アフガンの人たちは食べ物はもちろん、飲み物やタバコなども口にしない。こちらの人々は寒い朝に早起きして朝食を食べるらしいのだが、寝坊して食べ損なった私にはさらに厳しい。この日記を書いている間にも、はっと気がつくとこの前食べたケバブのことなどを考えている。そこにこのブハリの登場とその香ばしい匂いである。食いしん坊の私はついついブハリの上に置かれたパンやお餅を想像してしまう。
ラマダンでの終業時間の午後3時半を過ぎ、現地スタッフが帰ってしまうと早速日本からのスタッフはケーキやゆでたジャガイモに飛びついた。16時間ぶりの食事である。するとまだ残っていたドライバーが部屋に入ってきた。とりあえずお腹を満たしてほっとしていた私が見たのは、テーブルの上に残っていた皿を見たスタッフの微妙な表情だった。「あ、コイツ...。やっぱり俺達とは違うな...。」といったような。しまった。今までの我慢が水の泡...。
これから1ヶ月続くラマダンと来年の春までの厳しい冬。日本からのスタッフにとって長い冬になりそうである。
11月 8, 2002 事務所・スタッフ | Permalink
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