人と人の間にあるもの(駐在員椎名カブール日記)
カブールから北へ伸びる主要道路はショマリ平原の真ん中を突っ切って伸び、私を乗せた車は両側に崩れた家々や地雷原を見ながらその道を走る。道路わきにひっくり返った戦車の残骸を50台ほど数えるとそこがチャリカである。
ジェン・チャリカ事務所で働くスタッフはドライバーや門番を入れて全部で25人ほど。前回書かせていただいたアブドラを中心に、チャリカの46の村で日々シェルター事業に取り組んでいる。年齢は20歳から62歳までで、バックグラウンドや性格は様々である。冗談を飛ばし、飄々としているが、実はとても熱血漢で事務所にじっとしていないハルーン、勉強家で知識豊富、話し出したら止まらないジャラル、手がつぶされるかと思うくらいきつく握手をしてくるジャムシッド。その他性格や風貌も全く異なったスタッフ達は、わいわいがやがや、文字通り寝食を共にしながら仕事をしている。私は彼らと一緒に輪になって床に座り、みんなの顔を見ながら昼食を食べるのが好きである。「仲間」「同士」という感覚が味わえるからだ。
村々を回るとき、私はその村を担当しているスタッフと村人がどんな風に会話しているかに最も関心を払う。私がアフガニスタンで働くようになってつくづく感じるのは「ジェンとはそのスタッフである」ということだからである。ジェンのスタッフがどのように村人と接し、一緒に事業を行うのか。シェルター事業を行なっているとき、一番苦労するのは物資の運搬でも建設自体でもなく、村人の説得である。事業は村人の協力、理解をいかに取り付け、問題が発生したときに一緒に解決できるかにかかっている。受益者に直接係る現地スタッフの、村人に対する態度はアフガンでのジェンの運命を左右する。
「俺が作ったリストに文句あるのか!日本は金持ちなんだからけちけちせずに500軒でも1,000軒でも援助すればいいんだよ!俺の方がお前らなんかよりこの土地に詳しいんだから俺に支援の配布を任せろ。お前らが俺のリストのチェックをすることは許さない!」
現地の役人にそう言われ、気が短い私はカッと頭に来たり、途方にくれたりすることがある。かと思えば建材の早期配布を訴えて事務所にやって来た村長に、カブールからの建材の遅れや現状での努力をご説明してかえってとても感謝され、絆が深まることもある。以前働いていたインドで、支援物資の輸送費に頭を悩ましていた私に、村人が集まって相談しトラクターを出して助けてくれたことがあった。
私たちの支援というのは人と人の間にあるものだと、私は思うようになった。馴れ合いにならずに、お互いの持ち味を出せる関係。スタッフの間でも、スタッフと受益者との間でも。ジェンの本領はそこに発揮されなければ。
…と私はそこまで考えたところで、わが身の日頃の短気と忍耐力のなさを反省するのである。
10月 6, 2002 事務所・スタッフ | Permalink
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