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2002年9月 4日 (水)

アフガニスタンにいるクジラの話1(駐在員椎名カブール日記)

 日本にいた時、私は世界の先進国がアフガニスタン支援に巨額の資金を拠出する事を決めたニュースを何度も耳にした。日本政府が1億円以上の資金を出してアフガン暫定行政機構に公用車を8台支援したことには疑問を持ったものの、私はある種の期待をもってアフガンに入った筈だった。しかしひとたびアフガニスタンの土を踏んでカブールから車で郊外に出ると、人々の暮らしは基本的にあまり変わっていないのではないか、支援金はどこに行ってしまったのだろうかという思いにとらわれた。物乞いの子供達や女性。赤と白にペイントされて道の脇に並べられた、地雷原を示す石の列。崩れた家屋の壁はまるで古代遺跡のようだが、その脇に放置された戦車の残骸がそれが戦争の遺物である事を知らしめている。そしてその脇をやぎ飼いの少年がゆっくりと歩いていく。

 シェルター・プロジェクトの実施のため、受益者の村々を回るとき、外国人の私は村人の圧倒的な好奇と期待の目に見つめられ、取り囲まれる。しかし受益者の数と予算は決まっており、村人全員にそれぞれ支援をすることは出来ない。支援機関への過剰な期待は、疑心暗鬼と不満に変わりやすい。破壊された家屋を目の前にしての村人との話し合いは、忍耐と粘り強さが必要なのはもちろん、プロジェクトに対する自分自身の中の信頼、自信が求められる。支援金が正しく使われているという意識や自信は、現場で働くスタッフには不可欠なものであると私は思う。

 カブールから北に車で1時間半、パルワン州・チャリカにあるジェン・チャリカー事務所で現地スタッフ達とプロジェクトについて話をしながら、私は支援金の行方について思いをめぐらしていた。その時、一人のスタッフが私に問いかけた。

 「シイナ、アフガニスタンにクジラがいるって話、知ってるか?」
 「アフガニスタンにクジラが!?海もないのに?」

9月 4, 2002 住宅再建 |

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