アフガニスタンにいるクジラの話2(駐在員椎名カブール日記)
「シイナはクジラがどんなふうに餌を捕るか知っているか?」
「集団で追い込むとか?」
「違う違う。まずクジラは音を出して魚たちをを1つの群れに追い込んでから、そのままガブリ!と飲み込むのさ。」彼は大きな口を開けて飲み込むジェスチャーをし、すこし笑った。
「そうだったっけ?」
「アフガニスタンのクジラも同じように餌を捕るのさ。“支援金”という美味しい餌をね。」
「!?」
「アフガニスタンで働く支援機関の国際スタッフがいくら給料でもらっているか、シイナは知っているのか?」
「・・・・・」
私は話の流れをやっと理解し、すぐに反論しようとしたが、言葉が思うように出なかった。現実との相違点よりこの話の示唆している点に私は捉えられてしまった。彼の言うところの“クジラ”に、カブール市内を巡ればどれほど出会えるだろう。彼らの出す“音”とはさしずめ“XX支援”であり、“OOプロジェクト”という看板であり、つまるところは“アフガニスタン復興支援”というスローガンなのだろう。スローガンが支援金を集め、アフガンのクジラも海外から来たクジラもそれを飲み込む。
「海外から来る支援金の大半は、そうやってまた海外に戻っていくのさ。」
彼にとっては私もそのようなクジラの一頭にすぎないのか?私は彼の言うクジラなのだろうか?アフガニスタンの人々の目に、私たち支援関係者はどのように映っているのだろうか?
9月 4, 2002 事務所・スタッフ | Permalink
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